最新記事

アメリカ政治

ひと筋縄ではいかないトランプ大統領の弾劾 民主党ペロシ下院議長も指摘

2019年6月10日(月)09時07分

米国大統領が弾劾されたとしても、即座に権力の座から引きずり下ろされるわけではない。写真は2月5日、トランプ大統領の一般教書演説を聞くペロシ下院議長(2019年 ロイター/Doug Mills)

米国大統領が弾劾されたとしても、即座に権力の座から引きずり下ろされるわけではない。米民主党のペロシ下院議長が5日発言したように、簡単に「バイ・バイ・バーディ」とはいかないようだ。

ペロシ下院議長は、共和党のトランプ大統領の弾劾手続きに着手するよう一部の民主党員から圧力を受けている。トランプ氏は先週、弾劾について「卑劣で非常に不快な言葉だ」とコメントしている。

ペロシ下院議長はこれまで、民主党内からの弾劾要求をはねのけており、報道陣ともこの件について話している。

「大半の人々が、弾劾イコール公職を退くことだと思っていることをご存知だろうか」とペロシ議長は記者団に質問を投げかけた。「弾劾されたら、それでおしまいだと思っている。それは間違いだ」

「人々が考えているような目的達成手段ではない、投票して弾劾するだけ、それでおしまい、バイ・バイ・バーディ。でも、そういう風にはいかない」と下院議長は語った。

合衆国憲法は、大統領を弾劾し罷免する権限を連邦議会に与えている。しかし歴史上、上院の弾劾裁判によって罷免された大統領はいない。

現在、下院は民主党が支配しているため、弾劾決議は可能だ。しかしそれが審議される上院は共和党が支配しており、弾劾が可決される可能性は低い。

では、弾劾手続きはどのように行われるのだろうか。

●何を理由に弾劾するのか

米国の建国者たちは大統領職を創設したが、その権力が乱用される恐れがあると考えた。よって、合衆国憲法には弾劾が重要な項目として含まれた。

建国者たちは下院に「弾劾の唯一の権限」を与え、上院に「すべての弾劾を審議する唯一の権限」を与えた。また、上院での弾劾裁判では最高裁長官が判事となる。

憲法によると大統領は、「反逆罪、収賄罪またはその他の重罪および非行」について弾劾される。重罪と非行が具体的に何を指すのかは明らかでない。過去の例を見ると、汚職や訴訟手続きの妨害といった不正行為は含まれる。

下院の民主党員は、ロシアの米大統領選介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査をトランプ氏が妨害しようとした疑惑について調査している。

4月中旬に発表されたモラー特別検察官による編集済みの報告書には、大統領が複数回捜査妨害を試みたことが記されていた。報告書は、大統領が罪を犯したと結論付けることも、潔白を証明することもしなかった。

ペロシ下院議長は5日、「犯した罪について言うならば、大統領が司法を妨害したということは分かっている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中