米イラン戦争を回避する方法はある
How to Prevent an Accidental War With Iran
アメリカとイランの間には、従来の船橋間無線通信を除けば、船舶衝突を防止する仕組みが公式・非公式を問わず存在しない。協力すれば、この手の取り決めは比較的早期に実現可能だ。
一方、イエメンでサウジアラビアとホーシー派の対立激化を防ぐため、交渉や規範遵守目的のチャンネル、少なくとも危機勃発の際に意思疎通を図る窓口の設置をサウジアラビアとイランに促してはどうか。
最大のリスクは同盟国
各国海軍間の信頼醸成努力を再開する道もある。日米中など21カ国は14年、西太平洋海軍シンポジウムで「海上衝突回避規範」に合意した。だがペルシャ湾では、イラン革命防衛隊の反対のせいでそうした枠組みが実現していない。アメリカは欧州の同盟国やロシアを通じて、イランに再考を迫りたいところだ。
最大のリスクは、アメリカとイランそれぞれの同盟国や代理勢力の行動かもしれない。独自の目的や思惑がある彼らを制御するのは容易ではない。
米政権はイスラエルやサウジアラビアに、イランからの直接攻撃に反撃を行うことは認めるが、アメリカとイランの軍事衝突を招く行動は受け入れないと言明すべきだ。イランも代理勢力に同様の言明をすべきだ(イラク政府は既に国内のシーア派民兵組織に、アメリカによるイラン攻撃を正当化しかねない行動は慎むよう警告している)。
イラン政府は対米戦争を望んではいないはずだ。しかしこれらの衝突防止策に、あるいはアメリカとの交渉にさえ同意するかは見通せない。イランのジャバド・ザリフ外相は先日、緊張緩和に向けた米政権との交渉の「可能性はない」と発言した。
現時点で、偶発的事件がアメリカとイランの武力衝突に発展する危険性は恐ろしく高い。現場レベルでの危機管理・紛争防止措置を講じるのは、イランとの交渉や緊張緩和を実現する上でリスクの低いやり方だろう。トランプが本気で「反戦」を唱えているなら、イランとの衝突回避に向けた議論を今すぐ始めるよう側近に命じるべきだ。
<本誌2019年06月04日号掲載>
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