持続可能な医療社会へ、高度な分析で貢献するエンサイスリサーチセンター
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よりよい医療社会を目指して
持続可能な医療社会の実現に関連して、シン氏は、人口が減少していく日本において国民皆保険を維持していくためには多くの課題を解決する必要があると指摘する。また医薬品産業においても、これまで右肩上がりだった国内売上高が10兆円規模で頭打ちになった状況で、今後は業界の各社が現在の売上高を維持していくことも簡単ではなくなるという。
ただしシン氏は、ネガティブな状況だけではなく、ポジティブな要素もたくさんあると強調する。「たとえば、新薬の開発期間を2000年と2015年で比較すると、2000年の頃には10年かかっていたものが、15年後には約半分の期間で開発できるようになったということがあります。新薬が承認される期間も、かつて申請から15カ月から16カ月かかっていたものが、およそ半分に短縮されました」。
そうした現状と予測をふまえ、シン氏は政府が取り組んでいるように、制度やプロセスを見直し、有用なイノベーションを積極的に取り入れることが望ましいと語る。右肩上がりの時代に問題なく機能していた研究開発の手法や製造・流通のプロセスであっても、人口減少に伴い患者の数も減るなら、今まで以上の生産性向上やコスト削減を余儀なくされるからだ。
シン氏は、医薬品産業で活用できる有望なイノベーションの一つとして、人工知能(AI)に期待を寄せる。「たとえば、タンパク質・抗体の医薬への利用が見込まれる化学薬品が3,000種類ほどありますが、そのうち700種が開発可能な状態にまで研究が進んでいるのに対し、残りの2,300種ほどは開発を待っている状況です。ここでの解析や設計に AI を活用することで、新薬の開発状況を向上できると考えています。AIの応用は先の話だと思われるかもしれませんが、実はすでに医薬品産業でも取り入れられています。たとえばVeeva Systemsの『Nitro』(※第2回記事参照)は、AIをベースに構築されている大規模データ管理システムなのです」。「今後もAIに限らず様々な最先端テクノロジーが医療用医薬品産業の効率化で大きな役割を果たしていくと考えています。ERCは、データをベースに様々な観点からの分析・予測をし、新たな知見を共有することで医療社会に貢献していきたと考えています」。
ERCのセンター長として、データ分析に基づく的確で独自性のあるインサイトを今後も提供していきたいと語るシン氏。医療用医薬品産業の生産性向上に寄与するエンサイスのデータサービスとともに、ERCの情報提供で製薬企業の研究開発と医療制度の改善を支援し、持続可能な医療社会の実現に貢献したいという願いが確かに伝わってきた。
Tex:高森郁哉
Photo:遠藤宏