GDP7%の成長続くベトナムで電力ブーム 石炭産業の「希望の星」に
それでも石炭が王様か
だが、PDP8の長期計画がどうであれ、電力需要に対応する手っ取り早い対策をベトナムが必要としていることには変わりない。
「ベトナムは大規模な経済成長のただ中にあり、管理可能なコストで、なるべく早く発電能力を増大する必要がある」とシエラビスタのマーキー氏は語る。石炭火力発電は、現在進行中の計画により2020年までに現在の15ギガワット(GW)に加え、さらに2.7GWが追加されると同氏は言う。
政府データによれば、今月の電力消費量は過去最大の3万6000MWに達しており、現在供給可能な最大電力に迫っている。政府は今月、消費者に対し、大停電を回避するため、エアコンの設定温度を低くしすぎないよう要請した。
世界銀行によれば、ベトナムでは2030年までに最大1500億ドルに上る電力セクター向け投資が必要になるという。これは、2010年以降、同セクターに投じられた800億ドルのほぼ2倍に相当する。
ベトナムは、必要な電力増を実現するための資金調達に苦戦しており、汚職も引き続き問題となっているが、企業の市場参入意欲は高い。
世界最大級のガス火力発電タービンメーカーであるドイツのシーメンスは4月、将来的な協力に向けた覚書(MoU)をベトナム政府と調印した。
シーメンスでアジア太平洋地域大規模ガスパッケージ・ソリューション事業の担当副社長を務めるグレガー・フランク氏によれば、同社は、大規模発電プロジェクトに向けた「初期の開発及び株式・社債による資金調達」の段階にあるという。
また4月には、ベトナムにおける近年で最大級のエネルギー契約として、日本の国際協力銀行(JBIC)を中心とするコンソーシアムが、石炭火力発電所の建設向けに20億ドルの融資を承認した。
ベトナム国内の石炭埋蔵量が減少していることもあって、同国の年間石炭輸入量は2000万─3000万トンに、「今後1年程度で」増える、とコモディティ専門商社タタ・インターナショナルで鉱産資源販売部門を率いるサビアサチ・ミシュラ氏は予想する。
ベトナム税関のデータによれば、今年1-4月、ベトナムの石炭輸入量は前年同期比で2倍以上の1334万トンに達した。
マーキー氏は、現在の需要6300万トンに対して、輸入量が2030-40年のあいだに8000万トンから1億1000万トンでピークに達すると予測する。
こうした急成長が実現すれば、他の多くの国で斜陽化している石炭産業にとって、ベトナムは最後の急成長市場の1つになるだろう。
(翻訳:エァクレーレン)
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