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この10年間で一気に日本全国で顕在化した「8050問題」

2019年6月20日(木)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

しかし、同居する50代も甘えているだけではないだろう。<図1>に見るように、中高年の親同居・未婚無業者率は地方で高いのだが、都会のブラック企業で疲弊して帰郷したという人もいるだろう。地方では周囲の目も厳しい。今の状態を心地よいぬるま湯と思っている人はあまりいないはずだ。

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無職で求職活動もしていない45~54歳男性に対し、その理由を尋ねると、半分近くが「病気・けがのため」となっている<表1>。この中にはメンタルの病も含まれている。

長らく社会とのつながりを断って(断たれて)きた人には、精神を病んでいる人も多い。こういう人たちを社会につなげるためには、段階的な取組が必要だ。例えば当人が興味を持っていることを認め、それを糸口にすることも一つの手だ。引きこもりにはゲーム好きが多いが、それを逆手にとった「eスポーツ」による就労支援の取組が注目されている(毎日新聞Web版、2019年6月3日)。

ゆるい働き方を認めるのも大事だ。生活保護受給者に就労指導が入る場合、いきなり8時間超のフルタイム就業を促されるというが、これでは上手く行かないだろう。段階的にインクルージョン(社会参画)を進めていくことが求められる。

なかには、教員免許状のような専門資格を有している人もいる。昨今、学校も人手不足に悩んでいるが、こういう人たちをパート勤務で雇ってみたらどうか。オランダでは、中学校教員の半数がパート勤務だ(拙稿「パートタイム労働を差別する日本の特異性」本サイト、2019年4月3日掲載)。「ゆる勤」を取り入れることでワークシェアリングが進み、教員のブラック労働も是正される。

目的をもって好きなことにのめり込んでいる、ちょっとの時間でも就労している、社会と接している――こういう条件を満たす人は引きこもりではない。まずはこうしたことが社会参画への第一歩になる。

こうした取組を契機に、社会全体に「ゆる勤」を広めればいいのではないか。国民の多数が体力の弱った高齢者になる時代、そうしないと日本社会は回りそうにない。AIの台頭によってそれが可能になる見通しも出てきている。20世紀は「フルタイム(正社員)」の時代だったが、21世紀は「パート」ないしは「フリーランス」の時代だ。8050問題は、日本社会全体を未来型に変身させるカギを内包しているとも言える。

<資料:総務省『国勢調査』
    総務省『就業構造基本調査』(2017年)

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