イラン「あと10日でウラン貯蔵量が核合意制限を超える」と宣言 米「核の脅迫」と非難、 EUは静観
6月17日、シャナハン米国防長官代行は17日、中東に約1000人の米兵を追加派遣すると発表した。テヘランで2012年2月撮影(2019年 ロイター/Morteza Nikoubazl)
シャナハン米国防長官代行は17日、中東に約1000人の米兵を追加派遣すると発表した。イランの脅威を巡る懸念を理由とし、増派は「防衛目的」だと説明した。
イランと米国を巡っては、ホルムズ海峡付近で前週起きたタンカー攻撃に関与したとして米国がイランを非難したことを受け、対立激化が懸念されていた。
シャナハン氏は声明で「イランによる最近の攻撃は、中東地域で米国人や米国の国益を脅かすイラン軍やイラン系勢力による敵対的な行動についてわれわれが入手した信頼の置ける情報を裏付けるものだ」と表明した。
今回の追加派兵は、5月のタンカー攻撃を受けて先月発表された1500人の増派に加えて行われる。
これに先立ちイランは17日、2015年の核合意で定められた低濃縮ウランの国内貯蔵があと10日で制限量を超過する見通しだと明らかにした。実際に制限量を上回れば核合意違反と見なされ、米国などはイランが「核を使って脅迫している」として反発した。
2015年核合意ではイランの低濃縮ウラン貯蔵の上限を300キロ、濃縮度は3.67%までとしている。
イラン原子力庁のベヘルーズ・カマルバンディ報道官は国営テレビで「われわれは濃縮率を4倍にし、このところそれをさらに引き上げており、10日後には300キロの上限を超過するだろう」と表明。同時に「欧州各国が行動すれば、まだ時間はある」として欧州各国に行動を促した。
イランの動きは核合意維持に一段の痛手となるが、ロウハニ大統領は、核合意の崩壊は中東地域や世界の利益にならないとの見方を示した。欧州諸国は核合意維持に残された時間がまだあるとし、「非常に重要な局面にある」と強調した。
また、イランの有力国会議員はファルス通信に対し、欧州諸国が核合意を維持できなければ、イランは核拡散防止条約(NPT)から脱退すると述べ、「核合意維持に向けてイランが欧州側に与えた60日の期限まで残された時間は限られている」と警告した。
米国家安全保障会議(NSC)のガレット・マーキス報道官は、イラン側の姿勢は「核を使った脅し」だと非難。「イラン核合意で(ウラン濃縮)能力が温存されたため、濃縮が可能になっている」とした上で、「トランプ大統領はイランによる核兵器開発は容認しないとこれまでも明確に示している。イランのこうした脅しに対し、国際社会は圧力を強める必要がある」と訴えた。
イスラエルのネタニヤフ首相も米国の声に同調。イランが核合意に違反するなら、国際社会は対イラン制裁の「スナップバック(復活)」を直ちに実行する必要があると表明した。さらに「イランが核兵器を手に入れることをイスラエルは認めない」とし、先制的な軍事行動に出る可能性も示唆した。
英国はイランが核合意で定める上限を超えた場合、「すべての選択肢」を検討すると表明した。
一方、モゲリーニ欧州連合(EU)外交安全保障上級代表は「われわれは種々の声明ではなく国際原子力機関(IAEA)の報告に基づき対応する。これまでイランは核合意を順守しており、今後もそうあるよう願っている」と述べ、IAEAの判断を見極める考えを強調した。