最新記事

宇宙

新説「超新星爆発がヒトの直立二足歩行を進化させた」

2019年5月30日(木)17時30分
松岡由希子

超新星爆発がヒトの直立歩行に影響を与えていた...... Credit: NASA/CXC/SAO

<米カンザス大学の研究チームは、ヒトが直立二足歩行するようになったきっかけに超新星爆発があるという研究論文を発表した>

ヒトは、脚と脊椎を垂直に立てて二足で歩行する直立二足歩行が可能な唯一の生物であり、生物学上、その祖先である類人猿とは、直立二足歩行ができるかどうかで区別されている。ヒトが直立二足歩行するようになった要因については様々な説があるものの、まだ完全に解明されていない。

超新星に伴う宇宙線の影響で、世界中で森林火災が起こった

米カンザス大学のアドリアン・メロット名誉教授らの研究チームは、2019年5月28日、学術雑誌「ジャーナル・オブ・ジオロジー」で研究論文を発表し、「超新星に伴う宇宙線によって大気がイオン化(電離)し、落雷が急激に増え、世界中で森林火災が起こった」としたうえで、「ヒトの祖先は、森林が焼失して草原となったことで、この環境変化に適応するため直立二足歩行を進化させたのではないか」という新たな説を示した。

超新星とは、質量の大きな恒星が進化の最終段階で起こす大規模な爆発現象である。地球には800万年前から超新星からの宇宙線が到来していたが、そのピークは、地球から163光年離れた地点で超新星爆発が起こった、鮮新世から更新世氷河時代にわたる260万年前頃とみられている。

高エネルギーな宇宙線が下層大気をイオン化させ、落雷を引き起こした

研究チームでは、超新星からの宇宙線による大気のイオン化を計算した結果、下層大気のイオン化が50倍増加したことがわかった。

メロット名誉教授によると、通常、宇宙線は大気の深い層にまで浸透しないため下層大気がイオン化することはないが、超新星からの高エネルギーな宇宙線が下層大気をイオン化させ、大量の電子によって落雷を引き起こしやすくなったとみられている。土壌で見つかった炭素堆積物の分析により、超新星からの宇宙線が地球に到達した時期と森林火災が世界的に急増した時期が一致することもわかっている。

森林火災によって、かつて森林だった地域の多くが草原に変わった。メロット名誉教授は「超新星からの宇宙線が地球に到達する以前にも、樹上での移動に適応するため、二足歩行していたヒトは存在した」としながらも「森林がサバンナに変わったことで、移動しやすく、草の上から天敵を監視しやすくなるため、直立二足歩行が広がったのではないか」と推論している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

原油は5ドル過小評価、対イラン制裁で供給減のリスク

ワールド

今年のタイ経済成長率は2.7%、来年は2.9%に加

ワールド

中国のCO2排出量、24年に小幅増の見込み 気候目

ビジネス

日経平均は続落、円高を嫌気 感謝祭前の利益確定売り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中