米イラン対立エスカレート ホットライン不通が示す一触即発の危険性
米国、イラン両国の外交トップによるおおっぴらないがみ合いは、何かのきっかけで、直接交渉するルートがないために軍事衝突に発展してしまう可能性が高まっているとの懸念を深めることになるとの声が上がっている。写真は18日、米強襲揚陸艦キアサージに戻るAV-88ハリアー機。米海軍提供(2019年 ロイター U.S. Navy/Mass Communication Specialist 2nd Class Megan Anuci/Handout via REUTERS)
2016年に米海軍の小型船がイラン海域に入り込み、米兵10人が拘束された際、米国のケリー国務長官(当時)とイランのザリフ外相はものの数分で電話会談を始め、数時間後には兵士ら解放の手はずが整っていた。
いま同じようなことが起きたら、これほど速く解決できるだろうか。
ロイターがザリフ外相に聞いてみると、答えは「ノー」だった。「そんな風にいくわけがないだろう」
国連のイラン代表団によると、ザリフ外相と米国のポンペオ国務長官が直接言葉を交わしたことは一度もない。その代わり、ツイッターやメディアを通してお互いを中傷する、という手段でコミュニケーションをとる傾向にある。
ザリフ外相は、「ポンペオはイランについて話すときには必ずわたしを侮辱する。彼からの電話を取る義理はない」と語った。
両国の外交トップのおおっぴらないがみ合いは、何か誤解や小さい事故があった場合に、直接交渉するルートがないために軍事衝突に発展してしまう可能性が高まっているとの懸念を一層深める要素だと、米政府の元幹部らや外交官、議員や外交政策専門家は指摘する。
トランプ政権は今月、イランが米軍などへの攻撃準備を進めている可能性を示唆する情報があるとして、中東地域に空母打撃群と爆撃部隊、パトリオットミサイルを派遣した。
メーン州代表のアンガス・キング上院議員(無所属)はロイターに対し、「偶発的な衝突の危険性が日々高まっているようにみえる」と述べ、政府はイランと直接対話をするべきとの見解を示した。
欧州のベテラン外交官は、米国とイランのトップレベルの閣僚らが「会話をする仲」であることは、たった一つの出来事が危機的状況となることを防ぐために不可欠だと語る。
「無自覚に誰も望んでいない状況にならないよう、なんらかのチャンネルがまだ生きていることを願っている。いま飛び交っている挑発は憂慮すべきだ」
米国務省のモーガン・オータガス報道官は、2016年と似たような出来事があったらどうするのか、という質問には応じなかったが、「話すべき時が来たら、そのようにする手段をわれわれは持っていると確信している」とだけ述べた。
同報道官は、イランに対する「最大限の圧力」の目的は、交渉のテーブルにイランの指導者らを戻すことだと語った。
「イランが態度を普通の国のように改めれば、こちらも話をする準備はある」