最新記事

韓国事情

韓国で日本のハイブリッド車がシェアを拡大させている理由とは

2019年5月27日(月)17時00分
佐々木和義

ソウルのレクサス販売店 撮影:佐々木和義

<文在寅政権は大気汚染対策のために電気自動車の普及推進をはかる方針を掲げたが、日本のハイブリッド車がシェアを伸ばす結果となっている......>

韓国の輸入自動車市場で日本車のシェアが拡大している。2019年1月から4月の輸入自動車全体の販売数が前年同期と比べてマイナス24.6%と落ち込むなか、日本車は6.3%増加し、9年ぶりにシェアが20%を超えた。

ドイツ車が失速し、日本のハイブリッド車がシェア拡大

韓国で人気が高いドイツ車は、BMWは前年の火災事故による余波が続くなどで失速。加えて、国内外の各メーカーは、韓国政府が普及促進を掲げる電気自動車の販売を推し進めるが、充電に不安を持つ消費者は少なくない。信頼性の高い日本のハイブリッド車がシェア拡大を牽引している。

韓国輸入自動車協会の2019年1月から4月期の集計によると、日本車5ブランドの販売台数は1万5121台で、輸入車全体でのシェアは21.5%となっている。レクサスは、ES300hの3550台を筆頭に、3月に販売を開始したSUVモデルUX250hが目標を大きく上回るなど、ハイブリッド車が好調でシェアは4.6%から8%に伸びた。ホンダも前年同時期1774台の2倍を超える3673台を販売し、1.9%だったシェアが5.22%まで拡大している。

韓国環境部は大気汚染対策で電気自動車の普及推進をはかる

2017年にディーゼル車対策を公約に掲げた文在寅政権が誕生すると、ハイブリッド車のニーズが高まったが、大気汚染は収束するどころか、さらに拡大を続けて韓国環境部は電気自動車の普及推進をはかる方針を掲げた。2017年に2万5593台だった電気自動車の普及台数を2022年までに43万台に増やそうという計画である。

政府は購入時に最大900万ウォンを支援し、自治体も車種や普及目標に応じて450万ウォンから最大1100万を支援する。最大530万ウォンの税金減免も導入され、内外の自動車メーカーが電気自動車の販売促進に乗り出した。

100キロメートル前後だった1回の充電で走行できる距離が、ソウルと釜山の片道距離380キロメートルに近づくにつれて、電気自動車を購入する人が増え始めた。ソウルから釜山まで途中充電なしで走行可能という謳い文句は、韓国人にとってわかりやすい指標なのである。

2018年には3万2000台が売れて普及台数は倍増し、輸入自動車各社も電気自動車を相次いで投入しはじめる。
日産は補助金を考慮すると2000万ウォン台(200万円台)で購入できる第2世代「リーフ」の販売を開始し、ジャガーは「Iペース」を投入する。BMWも走行距離を248キロメートルに伸ばした「i3・120Ah」の販売を開始し、メルセデスベンツは純電気自動車「EQC」を販売する計画だ。世界の電気自動車市場でトップを走る米テスラは「モデルS」「モデルX」に続いて、普及型の「モデル3」の販売を検討する。

充電整備の立ち遅れでハイブリッドが人気に

政府や自動車メーカー各社が電気自動車の普及に取り組む一方、環境部の調査で55.8%の消費者が充電に懸念をもっている。充電スタンド検索サイトのイーブイウェア(EVwhere)に掲載されている2019年5月時点の充電スタンドは約9000箇所、充電器は1万5000基余りで、政府は今年中にさらに2200基以上が新たに設置される予定というが、地域格差が大きく、充電スタンドが電気自動車の普及速度に追いついていないのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中