最新記事

日米関係

トランプ大統領の大相撲観戦に前代未聞の備え

Trump Will Sit on a Chair and Not a Cushion at Sumo Bout, Outraging Purists

2019年5月23日(木)18時20分
ブレンダン・コール

外国人が伝統の相撲を観てくれるのは嬉しいが(大相撲ハワイ巡業、2007年) Hugh Gentry-REUTERS

<1500年以上の伝統ある相撲で椅子観戦にトランプ杯の授与。厳重警備で一般客にも影響必至の事態に批判的な声も>

ドナルド・トランプ米大統領が来日して大相撲を観戦する際、伝統的なスタイルである座布団ではなく椅子に座って観戦する見通しであることに、日本の伝統主義者たちは渋い顔をしている。

トランプは5月25日から4日間にわたって日本を訪問し、26日には東京の両国国技館で大相撲夏場所の千秋楽を観戦。優勝した力士に自らの名前が入った「トランプ杯」を授与する予定だ。

だが1500年以上という相撲の伝統を重んじる人々は、トランプが椅子で観戦することに腹を立てている。トランプは土俵にも近い「マス席」。本来は座布団を敷いて座る場所に、椅子を置いて座る予定だ。

相撲ファンのトマモト・マサル(73)はロイターの取材に対し、次のように語る。「トランプ大統領が日本の伝統スポーツである相撲を観たいのなら、椅子に座るよりも、座布団を敷いてあぐらで観戦する方がいいと思う」

それでも相撲にとっていいこと

だが日本体育大学で相撲部の監督を務める斎藤一雄は、トランプの観戦は相撲にとっていいことだと語った。

「相撲は日本の伝統文化だ。大事なのは勝ち負けだけではない。だからトランプ大統領がその相撲に関わり、トロフィー(杯)を授与することは、いいことだ」

トランプの大相撲観戦には、警備をめぐる懸念もある。1万1000ある座席のうち8分の1近くが、トランプと日本の安倍晋三総理大臣、さらにその警備チームのために押さえられている。

観客は手荷物検査や身分証の提示などを求められる可能性があり、前方の客席ではビールの販売が禁止される可能性もあると英字ニュースサイトのジャパントゥデイは報じている。また毎日新聞によれば、場内で配られる急須と茶碗も、凶器になりうるので当日は使えなくなる可能性があるという。

トランプの来日にあたって安倍は、トランプとの良好な関係をことさら強調している。共同通信は日本の貿易当局者の話として、トランプと安倍は、自動車や農産品の関税引き下げをめぐる意見の相違を解決したい考えだと報じた。

またトランプは、5月1日に皇位を継承した徳仁新天皇と面会する、初の外国の首脳となる見通しだ。

(翻訳:森美歩)

20190528cover-200.jpg
※5月28日号(5月21日発売)は「ニュースを読み解く哲学超入門」特集。フーコー×監視社会、アーレント×SNS、ヘーゲル×米中対立、J.S.ミル×移民――。AIもビッグデータも解答不能な難問を、あの哲学者ならこう考える。内田樹、萱野稔人、仲正昌樹、清水真木といった気鋭の専門家が執筆。『武器になる哲学』著者、山口周によるブックガイド「ビジネスに効く新『知の古典』」も収録した。


ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、クルスク州の完全奪回表明 ウクライナは否定

ワールド

トランプ氏、ウクライナへの攻撃非難 対ロ「2次制裁

ワールド

イラン南部の港で大規模爆発、14人死亡 700人以

ビジネス

アングル:ドバイ「黄金の街」、金価格高騰で宝飾品需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中