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ベネズエラ危機、独裁打倒の失敗とアメリカの無責任

Will Guaidó’s Gamble Pay Off?

2019年5月9日(木)16時20分
クリストファー・サバティーニ(コロンビア大学国際公共政策大学院講師)

一方でベネズエラに対する原油の禁輸や腐敗官僚の資産凍結などを進めれば、困ったマドゥロ政権はキューバの軍事顧問団への依存を強めるだけだ。キューバ以外の、やはり強権的な体制の国々にもすがるだろう。現に中国からは50億ドルの融資を受けた。ロシアからは軍事顧問100人を受け入れている。トルコはマドゥロ政権の金資産売却に手を貸している。イランの支援もあるはずだ。

制裁は切り札にならない

一方で、制裁がアメリカ政府の強力な切り札となったためしはない。制裁強化が政権転覆につながる理屈は示されていない。相手国を経済的に苦しめれば市民が一斉に蜂起し、エリート層が寝返って政権交代を促すという保証はどこにもない。

過去の例を見ても、制裁の強化で政権交代が実現した例はない。制裁強化を通じてベネズエラで平和的な民主化を実現するというシナリオは、論理的にも歴史的にも信憑性を欠く。

それでも4月末の蜂起が失敗に終わると、ボルトンはまたぞろマドゥロ政権を非難した。トランプはベネズエラ国内にいるキューバ顧問団を悪役に仕立て、対キューバ制裁のさらなる強化をちらつかせた。顧問団が残虐かつ無能なマドゥロ政権の存続に絶大な役割を果たしていると言いたいらしい。一方で国務長官のポンペオは、追い詰められたマドゥロの国外脱出をロシアが制止したと語ったが、そうした形跡は確認されていない。

この間、トランプ政権は一貫して政権転覆を支持する姿勢を強調し、「あらゆる選択肢」を検討していると繰り返し、ベネズエラ国民の期待を高めてきた。マドゥロ政権がまだ健在なことを認めた4月30日の記者会見でも、ボルトンは同じせりふを繰り返した。しかし、これでは「アメリカが助けに来てくれる」という期待をいたずらに膨らませるだけだ。

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あと一歩で政権奪取かと思われながら政府側のしぶとさに阻まれるグアイド CARLOS GARCIA RAWLINSーREUTERS

数々の専門家や関係者が指摘していることだが、アメリカが軍事介入することは政治的にも戦略的にも無謀過ぎる。米軍の幹部でさえ、軍事的選択肢は現実的でないとみている。

ホワイトハウスが強硬なのは口先だけだ。反政府勢力を軍事的に支援する具体的な計画は存在しない。それでもトランプ政権は威嚇を続け、反政府勢力に「いつかアメリカが助けに来る」という非現実的な希望を抱かせる一方、マドゥロ政権には「アメリカの軍事介入は近い」と内外の支援者に訴える口実を与えてしまっている。

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トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

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