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ニュージーランドNZ、人手不足が深刻化 政府の移民抑制策が成長鈍化を引き起こす?
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5月28日、移民の減少がニュージーランド(NZ)の人手不足に拍車をかけている。写真は同国のアーダーン首相。シンガポールで17日撮影(2019年 ロイター/Feline Lim)
移民の減少がニュージーランド(NZ)の人手不足に拍車をかけている。中銀は今月の政策会合でこの問題を取りあげ、労働力不足が国内経済への打撃となることへの懸念を示した。
一部の企業は、アーダーン政権の発足以降、就労ビザの取得が以前よりも時間がかかり、困難になっていると不満をもらしている。
アーダーン政権は、移民抑制と外国人の住宅購入制限につながるとみられる政策を掲げ、2017年に発足した。
国内経済は好調なものの、住宅市場の過熱と国内インフラの老朽化で、不満を抱えるNZ国民は多い。
エコノミストによると、外国人労働者の不足は主に、国民が好んで職を得ようとしない農業や病院などの分野や、建設業など専門知識が求められる分野に集中している。これらのセクターは、NZ経済成長に大きく寄与する分野だ。
オーストラリア・アンド・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニア・エコノミスト、マイルズ・ウォークマン氏は、移民はこれまで、国内景気サイクルにおいて大きな特徴となってきたと指摘した上で、移民減少が成長鈍化に寄与しているとの見方を示した。
労働年齢の移民の純増は2017年半ばに7万2400人とピークに達した後、18年には4万人に減少したが、中銀は今月、21年までに2万9000人に減少するとの見通しを示した。
移民の減少は、前政権の就労ビザ制限が一部要因とみられるが、アーダーン政権下ではさらに顕著だ。アーダーン政権は12月に、NZ国民の職の機会を増やすために一時就労者のビザ規定を厳格化すると発表。最近、職業訓練制度の改善計画を明らかにした。
政府は全般的な移民規制にはまだ動いていないが、個別措置でより厳しいスタンスを取っていると指摘する企業もある。
一方、リースギャロウェイ移民相は、企業が人材確保でまず移民に頼るべきでないと指摘。同相は、カフェやレストランなどのマネージャー職の外国人就労ビザが最近却下されたことについて、NZ国民に対するトレーニングや離職を減らすための戦略が飲食業界に欠けているためだと説明し、「飲食業界が移民を雇用できないということではない。移民を採用する前に労働市場のテストを満足させる必要があるということだ」と述べた。
ニュージーランド南島のダニーデンで、シェフがなかなか見つからず、今年、経営しているレストランのひとつを閉鎖したフルーア・カウルトン氏は「NZ国民を今よりも職に就かせようとする政府の取り組みを全面的に支持するが、われわれが求める人材でNZ人を見つけるのは難しい」とコメントした。
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