中国、「一帯一路」参加国の不安払拭に注力 東南アジアの鉄道計画再開アピール
一帯一路の参加国を集めて2回目の首脳会談を今週主催する中国政府は、このインドネシアのプロジェクトに加え、数カ月にわたる交渉を経て先日再開に漕ぎつけたマレーシアのイースト・コースト・レール・リンク(ECRL)をアピールすると見られている。写真は2月、インドネシア・ジャワ島の高速鉄道トンネル建設現場(2019年 ロイター/Willy Kurniawan)
インドネシア・ジャワ島の農村部では、オレンジ色の作業員2人が、軌道建設計画について中国語で相談していた。首都ジャカルタと繊維産業の中心地バンドンを結ぶ総工費60億ドル(約6700億円)の高速鉄道プロジェクトの1区間だ。
2人は中国の国有企業、中国中鉄(CREC)の従業員で、以前はウガンダの鉄道建設プロジェクトで働いていた。こちらも同じく、中国をアジア、欧州、さらにその先へとつないでいく数十億ドル規模の包括的なシルクロード経済圏構想「一帯一路」イニシアチブの一環だ。
インドネシアにおける鉄道路線142kmの建設は、用地取得上の問題で3年近く遅れた末、2018年にようやく本格的に始まった。
一帯一路の参加国を集めて2回目の首脳会談を今週主催する中国政府は、このインドネシアのプロジェクトに加え、数カ月にわたる交渉を経て先日再開に漕ぎつけたマレーシアのイースト・コースト・レール・リンク(ECRL)をアピールすると見られている。
一帯一路構想の参加国が背負う巨額の対中債務や、計画の不透明性さに対する批判をかわし、プロジェクトの重点を持続可能な資金調達、グリーン成長、高品質に軌道修正するため、中国当局が会談の場でこの2つのプロジェクトを提示するだろう、とアナリストは見込んでいる。
習近平国家主席の看板政策である一帯一路構想は、多くの西側政府からは批判も生まれていた。特に米国政府は、中国の影響力を海外に拡大し、不透明なプロジェクトを通じて持続不可能なレベルの債務を諸国に背負わせるものだと考えている。
ロイターが閲覧した共同声明の草案によれば、「一帯一路」首脳会議の参加国は、グローバルな債務目標を尊重し、グリーン成長を促進するようなプロジェクト・ファイナンスについて合意する予定だ。
これについてコンサルタント会社ユーラシア・グループのピーター・マンフォード氏は、「一帯一路を巡る最近のネガティブな報道傾向や、複数の国でプロジェクトが直面している課題に抵抗しようというものだ」と語る。
もっともマレーシアでは、マハティール・首相が総延長668キロのECRL計画再開に同意はしたものの、プロジェクトのコストを160億ドルから107億ドルに削減することを条件としている。
「中国にとってのリスクは、マハティール首相の成功を目にした他の諸国が、一帯一路計画について同じように厳しい再交渉戦術を採用し、他国でも進捗に遅れが出ることだ」とマンフォード氏は言う。
現段階で一帯一路参加国のいずれかが、中国政府と結んだ合意の再交渉を試みているという兆候はない。アナリストは、中国はより多くのビジネスを確保するため、参加国と協力してプロジェクトを実現可能なものにしていく意欲を示そうとするのではないかと見ている。