最新記事

ヘルス

男のあごひげには犬の体毛より多くの細菌が存在する:スイス研究結果

2019年4月19日(金)14時00分
モーゲンスタン陽子

MRI装置の人と犬の共用の調査から偶然発見された...... FXQuadro -iStock

タフな印象を与え、一部の男性や女性に根強い人気を誇る男性のあごひげ。しかしながらこのたび、スイスのある調査で、なんと人間男性のあごひげから、犬の毛よりも多くの細菌類が発見されたことがわかった。

人間と犬の医療機器共有はOK?

この研究結果は、なかば偶然に発見されたものだ。ドイツの医療専門誌エアツテ・ツァイトゥングによると、スイスではMRI(核磁気共鳴画像法)装置などに空きがある場合、ペットの治療目的で犬などに使用を許可することもある。とはいえ、高額医療装置のペットへの使用件数は非常に少なく、使用後は徹底的な消毒もなされるが、それでも人間用の医療機器を動物と共用することに不安を感じるひともいる。そこで、犬の毛から人間男性のひげに細菌が感染する可能性があるかの調査を始めたところ、今回の発見に至った。

調査の行われたスイスのチューリッヒ近郊のクリニックでは、毎年約8000人のスキャンに加え、ときどき犬のスキャンも行っている。今回の調査で対象となったのは18人の男性ボランティアと、16種30匹の犬。サンプル数はさほど多くない。人間男性の年齢は18歳から76歳、平均年齢36歳。犬の平均年齢は3.8歳で、犬年齢で人間の平均と近くなっている。

人間のひげと犬の首回りの毛からサンプルを取り調べたところ、人間の全員から、大量の細菌類が発見された。一方、犬で同程度の細菌が発見されたのは30匹中23匹だった。口内も調べたが、人間のほぼ全員から大量の細菌が発見された一方で、犬では30匹中12匹だった。

ほとんどは深刻な心配をする必要のないバクテリアだが、人間の被験者7名からは黄色ブドウ球菌などの危険な細菌も発見された。一方、犬では4匹に大腸菌などが見られただけだった(エアツテ・ツァイトゥング)。

すぐにひげをそる必要はない

研究を率いたアンドレアス・グートザイト教授は、「これらを鑑みると、犬はあごひげを生やした人間男性より清潔であると考えられる」と指摘する(BBC)。また、犬の使用後にはMRI装置の徹底的な消毒が行われるが、人間の患者がたて続けに入る場合に綿密な消毒が行われるとは言い難いだろう。筆者もドイツで膝のMRI検査を受けたことがあるが、前の患者との間隔は非常に短かった。

研究結果を受けて、インターネットではさっそく不当なひげ差別に抗議する声があがった。また、同教授自身も、すぐにひげを剃る必要はないと言っている。細菌は人体のどこにでもいるものだし、紙幣など日常的に触れるものにも多数確認できることはこれまでにも頻繁に報告されている。

実は、だいぶ以前にもアメリカで似たような研究がなされている。その時も、一部の人のあごひげは「トイレより汚い」だとか、「キスでも移る」などと騒がれたが、そちらも同様にサンプル数が少なかった(シュピーゲル・オンライン)。さらに、2009年の『サイエンス』誌は、最大の臓器である皮膚からは205種のさまざまな細菌類が1000以上見つかったが、それらの多くは顔や脇の下ではなく、前腕で見つかったと指摘している。

女性はあごひげがお好き?

男性のあごひげには巻き毛が多く、食べ物の屑などが残りやすいことも原因のようだ。いっそのこときれいさっぱり剃ってしまうのが楽かもしれないが、タフでワイルドな印象を与えるあごひげは「セクシー」とされ、女性にも人気がある。つい最近も「ゲーム・オブ・スローンズ」で人気を博した俳優キット・ハリントンがトレードマークのあごひげを剃り落としたが、ファンたちの失望ツイートがあふれたほか、テレビ番組では妻にも「またちょっとひげを伸ばしてくれない?」と揶揄された。

どうしてもひげを残すなら、頭髪と同じく、あごひげもこまめにシャンプーする必要がありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中