ノートルダム大火災で米右派が広める陰謀説
Dobbs Says Ruling Out Arson Is a ‘Political Decision’
大火災直後のノートルダム大寺院(4月16日) Christophe Petit Tesson-REUTERS
<仏当局が早々に「放火が原因ではない」と発表した理由は、これがテロとわかればフランス全土が炎に包まれるからだ、と彼らは言う>
パリ・ノートルダム大聖堂の火災で、仏当局が放火の可能性はなしと早々に判断したのは間違いだ──米FOXビジネスのキャスター、ルー・ドブスは、そう示唆した。
火災発生から一夜明けた4月16日、ドブスは数人の右派コメンテーターが唱える陰謀説に呼応し、火災の原因を調査もできない段階で、放火ではないと発表した仏当局に疑義を呈した。ただ、その根拠は明らかにしなかった。
火災発生後まもなく、仏当局は放火の可能性を否定し、「火災による偶発的破壊」との見立てで調査を開始した。火災が起きたとき、大聖堂では大規模な修復工事が行われており、報道では、この作業に関連した何らかのミスが火災を招いた可能性があると伝えられた。
しかしドブスは、これは「政治的な判断」だという。「わずか数時間で仏当局は放火という1つの可能性を排除した。たった数時間で。別の思惑が働いたと言わざるを得ない」と、ドブスは視聴者に言った。「事実の慎重な調査に基づく判断ではなく、政治的な判断だ」
イスラム過激派の犯行を示唆
ドブスは、フランスでは教会破壊事件が急増していると指摘する。「火災発生時から見過ごされてきたのは、フランスでは昨年875のカトリック教会が破壊されたことだ。言っておくが、875だ。今年3月にはわずか1週間で12の教会が破壊された。その中にはパリで起きた放火事件も含まれる。これが今回の火災の背景だ。これは憶測ではない。げんに今フランスで起きていること、フランス全土でカトリック教会に起きていることだ」
【関連記事】ノートルダム火災で浮かび上がった、フランスで1日2件起こっている教会破壊(放火され人糞をまかれ破壊され......)
事件の背景はしばしば「悲劇を隠蔽するために無視される」と、ドブスは言う。「ノートルダム大火災の原因について、自分たちの判断も憶測の域を出ないのに、『憶測』を排除した当局は、『これは放火ではない』と福音のように広めている」
ウィーンに本部を置く「欧州のキリスト教徒に対する不寛容と差別監視団」は3月、本誌の取材に対し、教会破壊の多くは、世俗主義者、フェミニスト、その他の反宗教団体によるものとみられると回答した。
ドブスは、放火を行なった可能性がある特定のグループを名指ししていないが、フランスの保守派コメンテーターは、この火災は政治的テロリストの仕業だと仄めかそうとした。アンカーのシェパード・スミスはこれを即座に遮ってインタビューを切り上げたと、ニュースサイト・メディアアイトが伝えた。