インドの巧妙なキリスト教弾圧
India's Endangered Churches
宗教的少数派に対する差別を警察が容認する一方、マスコミが世論に及ぼす影響も大きい。「この国の新聞は、キリスト教徒が自宅に集まって親交を深めるのは違法だと言わんばかりの書き方をする」と、ウッタルプラデシュ州のアブヒシェク・マシ牧師は言う。「キリスト教徒は村長に、村にとどまりたいなら自宅でキリスト教の集会を開くな、さもないと村から追い出すぞと警告される」
プーガルの教会のように、半年かけて新しい家を探し、新たに祈りの場を持つケースもある。借りた家の家主はイスラム教徒だが、彼らの祈りの集会に文句は言わなかったそうだ。
プーガルが新しい家と礼拝の場を探しているという情報が漏れると、突然「あいつは犯罪者だ」という噂が流れ、地域の家主には軒並み断られたという。
国外からの支援を禁止
ウッタラカンド州ハリドワールのスレンドラ・クマル牧師は、教会の閉鎖によってキリスト教に入信する人が増えたと語る。「大きな集会所の閉鎖は多くの小規模集会を生み出した」と彼は言う。「私たちは今まで訪れたことのない地域で伝道することができ、それが信者の増加につながっている」
インド内務省は16年、2万ものNGOに対し、国外から資金提供を受ける許可を取り消した。取り消された組織の多くはキリスト教系だ。最も悲惨だったのは、キリスト教の布教が目的と誤解された児童支援の国際NGOコンパッション・インターナショナルが資金源を断たれ、活動不能に陥ったことだ。
逆に子供の教育やヨガ教室、瞑想センターなどを運営し、キリスト教関連施設に対する暴力への関与もささやかれるBJP/RSS系の組織は堂々と国外から資金を受け取っている。
「特に貧しい人々の哀れな話を聞いたカリフォルニア州の篤志家からの寄付が流れてくる」と、バンガロールのキリスト教団体で働いていたサンジャン・ジョージは言う。「だが寄付をした人々は、この資金が過激なヒンドゥー教団体に回り、ヒンドゥー教徒以外の者を攻撃するために使われることを知らないのだろう」
総選挙(5月23日開票)が間近に迫るなか、ADFのクリスティはタミルナド州のエダパディ・パラニスワミ首相に面会を求めたときのエピソードを語ってくれた。親BJPの州首相に、キリスト教徒に対する差別をやめるよう申し入れるためだった。
簡単に会ってくれないことは分かっていた。「とにかく粘って、なんとか面会の約束を取り付けた」とクリスティは言う。「出掛けていくと廊下で1時間も待たされた揚げ句、秘書が出てきて、こう言ったよ。あいにくですが、首相は会合があるので外出しました。あなた方にはお会いできません、とね」
<本誌2019年04月09日号掲載>
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