最新記事

宗教弾圧

インドの巧妙なキリスト教弾圧

India's Endangered Churches

2019年4月9日(火)18時20分
スリンダー・カウ・ラル、M・クラーク

一方、BJPのイデオロギー的な母体で、同党の大衆運動を実質的に指揮しているのが民族義勇団(RSS)だ。アメリカのCIAはバジュラン・ダルを宗教的武装集団、RSSを民族主義団体と位置付けている。

プーガルの教会に押し入った「ヒンドゥー戦線」は1980年に結成され、ヒンドゥーの伝統を守ることを活動目的に掲げている。この組織は日頃から、キリスト教は欧米人の信仰だからインド人には向かないし、牧師は現金を渡して貧困層を改宗させていると非難している。

1年前の襲撃の際には他の集落からやって来た人も含まれていた。おそらくはヒンドゥー戦線の指導者に会えると誘われたか、あるいは日当をもらって参加したのだろうと、プーガルは言う。彼の弁護士N・スレシュは、政治的優位に立つために彼らが取る戦略は「無知な地元民にキリスト教徒との対立をあおり、教会を襲わせる」ことだと説明した。

プーガルの教会に来る信者の大半はカースト制度の最底辺を占める「不可触民」だ。それでもキリスト教徒に改宗すれば、地域社会で以前よりましな地位を獲得できる場合もある。逆に、もっとひどい差別を受ける場合もある。プーガルによれば、自身の教会に来る不可触民はみんな親の代からの信者だ。

憲法の保障は骨抜きに

インド憲法は信仰の自由を約束し、「社会秩序と道徳、健全さを保つことを条件に自由に信仰を持ち、実践し、広める権利」を認めている。だが現実にはこの条件がネックとなり、信仰の自由は骨抜きにされている。

例えば多くの州には改宗規制の州法があり、改宗の30日前に当局に申請しなければならない場合もある。また自身の宗教を公文書に記録されることも多い。しかも宗教次第で税控除や銀行融資、結婚に関することまで、法的な扱いが異なる。もちろん、優遇されるのはヒンドゥー教徒やシーク教徒だ。

最も腹立たしいのは警察の共謀だと、キリスト教徒の宗教的自由を守る国際NPO自由防衛同盟(ADF)代表のネヘミア・クリスティは言う。「ヒンドゥー至上主義の過激派は組織的に祈りの場を攻撃している。しかも警察とぐるだ」

「警察は被害者に『許可を取っていないならおまえを訴える』などと脅す一方、キリスト教徒を攻撃した人間は逮捕しようとしない。これはおかしい」

昨年1月にはタミルナド州の人里離れた教会に住む牧師が首をつった死体で発見された。その1週間前、牧師は地元警察に、ヒンドゥー教徒の男性数人が彼の教会を侮辱しているとの苦情を申し立てていた。

ウッタルプラデシュ州ではクリスマスイブに、キリスト教徒42人が「平和を乱した」という理由で逮捕され、クリスマスが終わるまで拘束された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン情勢、木原官房長官「石油需給に直ちに影響との

ワールド

茂木外相、「核兵器開発は決して許されない」 米攻撃

ワールド

米・イスラエルがイランに大規模攻撃、体制転換視野に

ワールド

中国、イラン攻撃の即時停止要請 米・イスラエルに懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKIが語った創作と人生の覚悟
  • 3
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキングが発表に...気になる1位は?
  • 4
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 5
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 6
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 7
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 8
    トランプがイランを攻撃する日
  • 9
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 10
    インフレ直撃で貯蓄が消える...アメリカ人の54%が「…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中