最新記事

北朝鮮

北朝鮮の反体制派「自由朝鮮」が独裁打倒を本格化、ビザ発給を開始

2019年4月8日(月)11時30分
トム・オコナー

自由朝鮮の動画では、女性闘士が臨時政府の樹立を宣言し、現体制の弾圧を批判 FREE JOSEON/YOUTUBE

<殺害された金正男の息子を保護したと主張していた謎のグループが、ブロックチェーンビザを発給。スペインの北朝鮮大使館襲撃にも関与している?>

北朝鮮の反体制派を自称するグループが、「解放後」の北朝鮮に滞在できるブロックチェーンビザの発給を開始したが、申請が殺到してサーバーがダウンする騒ぎになっている。

このグループはかつては「千里馬市民防衛」と名乗っていたが、現在は「自由朝鮮」に改称してインターネット上で臨時政府の樹立を宣言している。

自由朝鮮は公式サイトで「解放後のわが国を訪問できる匿名のブロックチェーンビザを限定で20万枚発給する」と発表した。このビザは、創始を意味するgenesis の頭文字を取って、Gビザと呼ばれ、仮想通貨イーサリアムで購入できる。

しかし発表直後の3月24日には公式サイトに「Gビザの登録を扱うサーバーが未曽有の通信量によるネット渋滞に陥り、設備増設のため韓国標準時の午前9時(米国東部標準時の午後8時)まで12時間受け付けを停止する」との告知が出た。

公式サイトは「Gビザは投機的なトークン(代用貨幣)ではない」と述べ、「若い番号のGビザ入手にこだわらないのなら、明日まで申請を待ってほしい」と、支持者に訴えた。

既に数十枚が販売され、オークションで高値で取引されていると、テクノロジー系メディアが伝えている。

自由朝鮮はインターネット上の公式サイトとYouTubeの公式アカウントがあるだけで、実態はほとんど分かっていない。

千里馬市民防衛と名乗っていた時期に北朝鮮の反体制派としてメディアの注目を引いたことがある。北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)党委員長の異母兄に当たる金正男(キム・ジョンナム)が2017年 2月、マレーシアの空港で殺害された事件は記憶に新しいが、この組織は翌月その長男の金(キム)ハンソルとみられる男性の動画を公開。「金正男氏の遺族から脱出と保護の緊急要請」があり、われわれはそれに応じたと発表した。

これがこのグループの最初のメッセージで、その後も散発的に北朝鮮からの「救出」を報告していた。今年に入ってからはネット上で金正恩体制打倒のメッセージを盛んに打ち出すようになり、このところ米メディアもその活動を報じている。

米情報機関とつながりも

自由朝鮮はビザ発給に先立つ21日未明、神格化されたかつての指導者、金日成(キム・イルソン)とその息子の金正日(キム・ジョンイル)の肖像画を、北朝鮮人とされる男が「わが祖国の土」にたたきつける動画を公開した。

ただし、これが本当に北朝鮮で撮影されたものかどうかは「疑わしい」と、脱北者の元軍人が香港紙サウスチャイナ・モーニングポストに語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中