最新記事

中国

「令和」に関して炎上する中国ネット

2019年4月4日(木)12時40分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

新元号「令和」 Franck Robichon/ Reuters

清王朝以来「年号」を失ってしまった中国の民の、日本の新元号「令和」に対する関心の熱さは尋常ではない。元号発表の数分後からネットは反応し、「令和」の由来が東漢の張衡の『帰田賦』にあると燃え上がった。

『帰田賦』と「万葉集」巻五「梅花三二首の序」の類似点

中国のネットユーザーたちが書いている内容からご紹介する。

まず、張衡(ちょう・こう)(西暦78年~139年)は東漢時代の天文学者・数学者であると同時に文学者・歴史学者・思想家でもあり、中国では、学校教育で必ず学ぶ偉人の一人である。彼に関する映画もあればテレビドラマもあり、また多くの伝記も著されている。そのため、中国の多くのネットユーザーは張衡の『帰田賦』に馴染みが深く、詳細に知っているのである。

日本で4月1日午前11時41分ごろに菅官房長官が、新年号が「令和」に決まったと発表し、典拠は日本最古の古典「万葉集」(西暦780年頃)の「梅花三二首」の序文であると述べた。具体的には「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(かぜやわら)ぎ、梅(うめ)は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」という文言から引用したという説明があった。

口頭では「ひらがな」を交えて説明があったが、万葉集の「梅花三二首」の序文は漢字だけで書かれており、漢字だけを並べると以下のようになる。

  ――初春令月、気淑風和。梅披鏡前之粉、蘭薫珮後香。

これを見た瞬間、中国のネットユーザーが反射的に連想したのが張衡の『帰田賦』にある次の句だ。

  ――仲春令月、時和気清。原湿郁茂、百草滋栄。

さて、前半の8文字を見てみよう。

  万葉集:初春月、気淑風

  帰田賦:仲春月、時気清。

最初の2文字は万葉集より遥か前にあった『帰田賦』における「仲春」が「初春」に置き換えられているだけだ。「仲春」は「春半ば」の意味で、それが「初春」と表現されているが、「令月」=「佳い月(2月)」であることに変わりはない。

次に「気淑風和」と「時和気清」を比較してみよう。

「気淑」は「気(き)淑(よ)く」(=きよく)と、ひらがなを交えて菅官房長官も安倍首相も説明しているが、「気淑」は「気清」に対応しており、「清く」(=きよく)なのである。

残りの2文字は、万葉集では「風和」となり、「帰田賦」では「時和」となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中