最新記事

北朝鮮情勢

飢える北朝鮮──ハノイ会談で非核化をけちったツケ

North Korea on Brink of Food, Oil Shortages: Report

2019年4月2日(火)16時50分
ブレンダン・コール

物別れに終わったハノイ会談。致命的な間違いを犯したのはどちらか Leah Millis/ REUTERS

<制裁緩和を期待していた金正恩は、トランプとの2度目の首脳会談が決裂すると、国際機関に人道支援を乞うよう指示した>

北朝鮮では食糧不足があまりに深刻になったため、政府関係者は国際機関に支援を求めるよう命令を受けた。韓国紙が報じた。

韓国の朝鮮日報が、韓国の情報機関、国家情報院(NIS)の情報として伝えたところによると、北朝鮮の金正恩党委員長は、2月末にベトナムのハノイで開催された米朝首脳会談が決裂し制裁緩和の希望がなくなった後、人道支援を仰ぐよう命令したという。記事によれば、北朝鮮の国連大使、金星(キム・ソン)は3月20日に、国際機関に対して支援を要請する書簡を送付した。

同じく制裁緩和を期待していた北朝鮮当局は、ダメとわかると代わりに外資系貿易会社の駐在員が持つドルを差し押さえた。

北朝鮮の外貨準備高や食料、石油の備蓄は、1年も持たないのではないかと朝鮮日報は報じている。

国連は3月はじめ、北朝鮮国内の食糧生産は、自然災害の影響を受けて、この10年あまりの最低水準まで落込んだ、と発表した。長引く熱波に加え、台風と洪水が発生し、穀物の収穫量が大幅に減少したのだ。

スウェーデン赤十字社の社長マルガレータ・ワルストロムはロイター通信に対し、一部の地域ではトウモロコシの収穫量が3分の1近くまで落ちたと述べている。

大使館職員を縛り、殴り、拷問

人道支援活動は本来、国連制裁の対象外だ。しかし、別途科されている金融制裁や船の「瀬取り」監視などのため、人道支援は2018年に事実上ストップしている。

その結果、北朝鮮に住む2500万人のうち、6.6%に相当する380万人が、緊急に人道支援を必要とする状態に置かれている。

その一方、3月はじめには、北朝鮮は長距離ミサイルの発射場を復旧させたようだと、韓国の聯合通信が報じている。

また閉鎖する約束だった北朝鮮西部にある西海衛星発射場もほぼ復旧が終わった。

在韓米軍司令官のロバート・エイブラムス陸軍大将、3月27日に下院軍事委員会に出席し、2月に米朝首脳会談が行われたあとも、北朝鮮が非核化を進めている様子は見られないと証言した。

なお、2月にスペインの首都マドリードで発生した北朝鮮大使館襲撃事件について、北朝鮮政府はスペイン当局に対して捜査を要請。この事件は、国際法に違反する「重大なテロ攻撃」だと主張している。

CNNの報道によると、北朝鮮外務省はスペイン当局に対し、2月22日に発生した襲撃事件について捜査を行うよう要請した。北朝鮮側は、事件の際、体制打破を訴えた武装グループが大使館職員を「縛り、殴り、拷問」してからコンピューターを持ち去ったと主張している。

(翻訳:ガリレオ)

20190409cover_200b.jpg

※4月9日号(4月2日発売)は「日本人が知らない 品格の英語」特集。グロービッシュも「3語で伝わる」も現場では役に立たない。言語学研究に基づいた本当に通じる英語の学習法とは? ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)「日本人がよく使うお粗末な表現」、マーク・ピーターセン(ロングセラー『日本人の英語』著者、明治大学名誉教授)「日本人の英語が上手くならない理由」も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中