英EU離脱巡り独仏にきしみ マクロン大統領が長期延期に猛反対
孤立は望まず
一方マクロン氏はEU首脳会議終了後、EUの共同利益を保つためならば孤立をいとわないつもりだったと強調。「はっきりした態度でいることを言い訳しない。現在の局面で原理原則を維持するのがフランスの役割でもある」と語った。
フランスのある外交筋は、マクロン氏はドイツとの間で体裁を整えるだけの妥協には満足しなかった半面、オランダやデンマーク、スウェーデンとは協力したかったと打ち明けた。「われわれは孤立したリーダーシップ─たとえそれが光栄ある孤立だとしても─ではなく、あくまで他国を結集できるリーダーシップを追求している」という。
それでもマクロン氏の考えでは、ぎりぎりまで決断をしないメルケル氏の姿勢は、ブレグジットの過程で逆効果をもたらす。EUは英国をつなぎ止め続けて2016年の国民投票結果を反故にしようとすべきでなく、それは欧州議会選においてポピュリスト(大衆迎合主義)勢力がEUは民意を無視していると攻撃する格好の材料を与えてしまう、というのがマクロン氏の主張だ。
もっともあるEU高官は「マクロン氏は強い発言力を持っていると証明したいのだ。多分、欧州議会選でフランスが英国より欧州懐疑派寄りになるのを恐れている。いずれにしても根回し不足だった」と突き放した。
難しい局面
2度の世界大戦で敵国同士となり多くの犠牲者を出したドイツとフランスは、その後欧州統合主義の中核となっており、両国の関係は依然としてEUの将来を大きく左右する。
マクロン氏としても、国境管理や移民、安全保障、財政などで欧州統合をうまく深化させたいなら、ドイツの支持は欠かせない。
ところが現実には退任が近づいてきたメルケル氏の影響力が衰え、マクロン氏も国内で「黄色いベスト運動」として知られる政府批判運動にさらされ、欧州全体がブレグジットにかかりきりとなっている以上、マクロン氏が切望してきた統合を進めるための改革を実行する好機はほぼ過ぎ去った。
さらに独仏は、幅広い問題で意見を異にしている。欧州改革センターのチャールズ・グラント所長は「両国関係は難しい局面に入っている」と分析。具体的には対米関係やEUの安全保障、デジタル課税などで食い違いがあるとした上で「より全般的にフランスは欧州の強大化を望み、そのために抜本的な改革が必要だと考えているが、ドイツは現在のEUのあり方にかなり満足している」と温度差を指摘した。
(Michel Rose、Andreas Rinke、Gabriela Baczynska記者)
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