最新記事

ロシア疑惑

トランプはまだ「潔白」とは限らない──ロシア疑惑捜査報告書

Trump Says Mueller 'Exonerated' Him, AG Says It Didn't

2019年3月25日(月)13時24分
ティム・マーシン

ホワイトハウスの外で記者に囲まれるトランプ米大統領(3月24日) Carlos Barria- REUTERS

<「(選挙介入でロシアとの)共謀なし、司法妨害なし、完全に潔白だ」と、トランプは勝利宣言をしたが>

ドナルド・トランプ米大統領は3月24日、ロバート・ムラー特別検察官によるロシア疑惑の捜査報告書に関するウィリアム・バー司法長官の書簡に対して、反応を示した――もちろん、ほかならぬツイッターで。

大統領のツイートは次のとおり。「(ロシアとの)共謀なし。司法妨害なし。完全かつ全面的に潔白が証明された。アメリカを偉大にし続けよう!」

ホワイトハウスも同様の反応を示し、サラ・サンダース報道官はツイッターにこう投稿した。「(ムラ―)特別検察官は、いかなる共謀も司法妨害も見つけられなかった」「バー司法長官とロッド・ローゼンスタイン司法副長官はさらに、司法妨害はなかったとの判断を下した。司法省の結論は、大統領の完全かつ全面的な潔白を証明するものだ」

気になるのは、大統領とホワイトハウスが「潔白」という言葉を使ったことだ。ムラ―から捜査報告書を受け取ったバー司法長官は書簡で、ムラーがトランプ陣営がロシアと共謀したともトランプが罪を犯したとも確認しなかった、とした一方で、報告書は「大統領の潔白を証明するものではない」としているからだ。

バー司法長官、報告書精査にたった「2日」

バー司法長官が議会に提出した報告書の要約(一部)には、次のように書かれている。

「特別検察官は、検証対象となった行いが司法妨害に相当するかどうかについて、結論を出していない。捜査を行った行動の一つ一つについて、報告書は問題の双方の側面についての証拠を提示しており、特別検察官が法律上の『難題』とした部分、および大統領の行動と意図が司法妨害と見なされ得るかどうかについては、未解決となっている。特別検察官は『本報告書は大統領が罪を犯したと結論づけるものではないが、大統領の潔白を証明するものでもない』と述べている」

一方でバー長官は書簡の中で、ムラー特別検察官からの報告書を検証した上で、自分とローゼンスタイン副長官は、司法妨害罪については立件しないと決断したと述べている。

その説明がこうだ。「一般的に、司法妨害の有罪判決を得てそれを維持するためには、政府は、問題の人物が腐敗した意図をもって行動し、差し迫った、あるいは予期される出来事に十分な結びつきのある妨害行為に携わったことを、合理的疑いの余地を残さずに証明する必要がある」が、そのような行為は見つからなかったという。つまり、司法妨害の十分な動機が見つからなかったと言いたいのだろう。

だが、これまでにムラ―が提出した捜査報告書の原本を見たのはバーをはじめとする司法省だけ。なぜ公開しないのか。

ニューヨーク州選出の民主党下院議員で、下院司法委員会の委員長であるジェロルド・ナドラーは、バー長官を同委員会に召喚して証言を求めるつもりだと語った。

「ムラー特別検察官は22カ月をかけて、トランプ大統領がどこまで司法妨害に携わったのかを判断するための捜査を行った」とナドラーはツイッターに投稿した。「それに対してバー司法長官がアメリカ国民に、大統領は潔白ではないが司法省が立件しないと述べるまでにかかった時間は、たった2日間だ」

(翻訳:森美歩)

20250304issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月4日号(2月26日発売)は「破壊王マスク」特集。「政府効率化省」トップとして米政府機関をぶっ壊すイーロン・マスクは救世主か、破壊神か

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の銀行、ドル預金金利引き下げ 人民銀行が指導=

ビジネス

イオン、イオンモールとディライトを完全子会社化

ビジネス

日経平均は大幅反落、一時3万7000円割れ 今年最

ワールド

インドネシア中銀が為替介入、ルピア対ドルで5年ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中