アルメニア語でツイートしたトルコ大統領の胸算用
エルドアンは1915年の事件はジェノサイド(集団虐殺)ではないと主張してきたが、昨年に発表した声明ではアルメニア人の犠牲者に哀悼の意を表している。「トルコはその良心と道義的責任に鑑み、アルメニア系市民の歴史的な苦痛に共感を寄せる」
これについても懐疑的な見方がある。「トルコのキリスト教徒に最大の影響力を持つアルメニア教会を味方に付ければ、国内外で自分に対する評価が変わると思っている」と、アルメニア人のトルコ研究者バルジャン・ゲガミアンは手厳しい。「しかもエルドアンはオスマン帝国の皇帝に自分をなぞらえたがる。イスラム教徒だけではなく、キリスト教徒をはじめ多様な臣民の支配者を気取りたいのだろう」
トルコとアルメニアは今も正式な国交を結んでいない。両国の国境は封鎖され、主にロシア兵が警備に当たっている。
1915年の事件はとげのように両国間に突き刺さったままだ。アルメニアはジェノサイドと認めるようトルコに要求しているが、トルコは「根拠なし」と突っぱねている。エルドアンが国内のアルメニア系の懐柔をもくろんでも、アルメニアとの真の和解はまだまだ遠そうだ。
<本誌2019年03月26日号掲載>
※3月26日号(3月19日発売)は「5Gの世界」特集。情報量1000倍、速度は100倍――。新移動通信システム5Gがもたらす「第4次産業革命」の衝撃。経済・暮らし・医療・交通はこう変わる! ネット利用が快適になるどころではない5Gの潜在力と、それにより激変する世界の未来像を、山田敏弘氏(国際ジャーナリスト、MIT元安全保障フェロー)が描き出す。他に、米中5G戦争の行く末、ファーウェイ追放で得をする企業、産業界の課題・現状など。

アマゾンに飛びます
2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら