ネオナチと仮想通貨の意外な関係
Neo-Nazis Bet Big on Bitcoin (And Lost)
2017年のビットコイン・バブルの絶頂期には、ビットコインを購入したネオナチが金持ちになることを多くの人が心配していた。
しかし極右勢力が蓄えた富は、彼らが望むほど秘密にはできなかった。ビットコインの取引は匿名ではない。偽名で取引ができるが、すべての取引に公開元帳が存在する。だから極右勢力のメンバーのものと知られているビットコイン・アドレスへの決済は、複数のサイトに監視されている。コンピュータ・セキュリティ・サービス「スレートストップ(ThreatSTOP)」のジョン・バンベネックが運営するツィッター上の「ネオナチ BTCトラッカー」(@neonaziwallets)は、白人至上主義者の世界における仮想通貨資金の流れを記録している。
「ビットコインは、ネオナチのテロ集団が資金を調達し、使う能力を提供する。それをやめさせることは難しい」と、バンベネックはフォーリン・ポリシー誌に語った。「だが同時に、私のような情報分析アナリストが、ネオナチの動きを自由に調べる能力も提供してくれている。ビットコインの元帳は公開されているからだ。彼らはビットコインを使うことによって、プライバシーをすべて放棄することになる」
広がる極右を排除する動き
さらに、ビットコインの換金はそう簡単にはいかない。米ドルを引き出すことができる仮想通貨の交換所は数カ所しかなく、銀行は仮想通貨に基づく資金に手を出そうとしない。「ビットコインは、実際の通貨やものに変えることができて初めて意味がある」と、バンベネックは言う。「それができる場所は限られていて、そのうちの多くは極右勢力に対抗する動きを助けてくれている」
アメリカの大手仮想通貨取引所コインベースは、そのプラットフォームから暴力的な過激派を探しだし、積極的に排除する方針を打ち出している。過激派が利用するアカウントも削除している。2018年10 月27日にピッツバーグにあるシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)で銃乱射事件が起きた後には、容疑者のロバート・バワーズが大量殺戮の計画を投稿していた極右ソーシャルメディア「Gab」からツイッターやペイパルといった有力企業の撤退が相次いだ。
ネオナチには世の中に正体を明かさないようにするだけの自制心がなく、おかげでバンベネックの仕事がやりやすくなっている。たとえば、最近のある取引で、デイリーストーマーに0.001488ビットコイン(当時約5.93ドル)が送られた。「1488」はネオナチの間で合図として使われる数字だ。「14」は「われわれは白人の子供たちの存在と未来を守らなければならない(We must secure the existence of our people and a future for white children)」という14語からなる白人至上主義者のスローガンを意味し、「88」は「ハイル・ヒトラー(Heil Hitler)」を意味する。
「こういう連中は、自分を誇示することをやめられない」と、バンベネックは言う。「傲慢と無能が合体しているという、彼らの奇妙な特性には驚かされる」
クライストチャーチのテロリストにとって、仮想通貨で億万長者になる夢が笑えないジョークで終わったのも無理はない。
(翻訳:栗原紀子)
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