欧州の優等生ドイツは景気後退の瀬戸際? トランプ関税とブレグジットの二重苦が襲う
悪循環
コメルツバンクとIFO経済研究所それぞれの試算によれば、2つのシナリオが両方とも現実になれば、複合的な影響により、長期的にはドイツGDP成長率が0.7%ポイント下がる可能性がある。
すでにドイツ政府は、今年のGDP成長率が2018年の1.4%から1%に減速すると予測している。だがこの予測は、米国との通商摩擦のエスカレート、合意なきブレグジットの両方を回避できるという前提に基づいている。
「無秩序なブレグジットの場合、不確実性の増大や調整プロセスなどの短期的な悪影響が予想されるが、これらを数値化することは難しい」と、ある経済関係省庁の広報官は語った。
だがこの広報官によれば、複数の研究では、合意なきブレグジットは、長期的にドイツの成長率に年0.2%ポイントの打撃を与えるという試算が出ているという。ドイツ車に対して米国の関税引き上げが与えるとみられるダメージについては、具体的な数値を示さなかった。
独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のハーバート・ディエス最高経営責任者(CEO)は、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューの中で、米国の関税引き上げは同社にとって年間25億ユーロのコスト増につながる可能性があると述べた。
IFO経済研究所の試算では、トランプ政権が輸入車に対して25%の関税をかけようとしているのであれば、ドイツ車の対米輸出は長期的に約50%も減少する可能性があるという。
コメルツバンクのエコノミスト、イエルク・クレーマー氏は、「ドイツのGDP成長率を約0.5%ポイント引き下げることになるだろう」と話す。
エコノミストらは、米国の関税引き上げと合意なきブレグジットが重なった場合、企業の景況感と消費意欲にも打撃が及び、ドイツ経済全体が悪循環に陥るだろうとみている。
経済に対する先行き不安が労働市場にも波及するようだと、国内経済の大黒柱である家計消費もぐらついてくる、と市場調査会社GfKのロルフ・ビュークル氏は警鐘を鳴らす。
「年間を通じて、労働者が、自分もいつ解雇されるか分からないという印象を抱くようになれば、消費の雰囲気にも直接的な悪影響が生じる」と同氏は言う。
さらに、成長率の低下は税収の低下を意味することから、経済を悪循環から救い出すような大規模な財政出動を政府が取りまとめる力も限定されることになる。
連立与党の関係者がロイターに語ったところでは、ショルツ財務相は現在、4年間で50億ユーロの優遇税制により、企業の研究開発投資を支援することを狙った法案を策定中だという。
この計画の財源は想定されている財政黒字であり、その分、他の財政出動措置を講じる余地は小さくなる。
「政府がリセッションに対抗するために新たな財政出動措置を提示したいと考えても、選択肢は2つしかない。税金を上げるか、新規国債を発行するかだ」と、メルケル連立政権のある与党議員は匿名でこう語った。
(翻訳:エァクレーレン)
[ベルリン ロイター]
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