比ドゥテルテ大統領、麻薬汚染政治家リスト公表を予告 「外国政府の盗聴利用」が二転三転、反発広がる
麻薬汚染政治家を公表するというドゥテルテ大統領。写真は国家警察の幹部に麻薬取引に関与した容疑者のリストを見せるドゥテルテ大統領。Romeo Ranoco / REUTERS
<麻薬犯罪対策のためなら「超法規的殺人」もいとわぬ大統領が、今度は汚れた政治家たちの名を公表すると息巻いているが......>
フィリピンのドゥテルテ大統領が最優先課題として厳しい姿勢で臨んでいる麻薬関連犯罪対策の一環として3月5日に麻薬汚染疑惑のある政治家のブラックリストを近く公表する方針を明らかにした。
ところがこの公表方針に関して国会議員などから猛烈な反対、抗議が沸きあがり、政府が対応に躍起となっている。それというのも、政府が「この麻薬汚染政治家リストは、外国政府による電話の盗聴記録に基づくものである」としたことから「外国政府の提供した情報に妥当性がない」「盗聴記録を証拠するのはフィリピンの法律違反である」などという激しい反発を招いているのだ。
ドゥテルテ大統領自身はそうした「雑音」に耳を貸すつもりはなく、早ければ3月11日の週にもリストを公表する方針を崩していないが、大統領府、政府と議員などの間でこのブラックリスト問題は白熱化している。
3月5日にエドアルド・アニョ内務・地方自治相は「大統領は政治家リストを近く公表する」としたうえで、リストには政治家82人の名前が記載されていることを明らかにした。その多くは5月の総選挙に立候補している地方政府関係者というが、アニョ内務・地方自治相は「有権者に対して違法麻薬を擁護するような立場の候補者を(投票で)選ばないためにもリストの実名を公表することは必要だ」と大統領の方針を擁護する発言をしたことを地元紙「インクワイアラー」などが一斉に報じた。
情報提供元は米ロ中イスラエルの4カ国
大統領府のサルバドール・パネロ報道官兼法律顧問は「フィリピンの政治家による違法麻薬取引に関する情報を外国政府による電話の盗聴記録から提供を受けた」ことを明らかにし、関連する外国政府として「米国、ロシア、中国とイスラエル」と具体的な国名を挙げた。
こうした政府の方針に対し、国会議員や法律関係者、人権団体などからは一斉に反発の声が上がった。「電話の盗聴はフィリピンにおいては裁判所の許可なしでは違法であり、その違法行為で得られた証拠で麻薬関連犯罪と関係づけるのは、違法行為に違法を重ねるようなものだ」という指摘である。
大統領府の法律顧問でもあるパネロ報道官は「外国政府が電話を盗聴して提供された情報は違法ではない」との見解を示し、リスト公表には法的問題点はなく、大統領も公表に同意していることを改めて強調した。
またパネロ報道官は「外国政府とはテロとの戦いと同時に、犯罪でも共に戦っており、その一環として情報提供があったと考えている」との姿勢を示した。