米朝「物別れ」を中国はどう見ているか? ──カギは「ボルトン」と「コーエン」
ハノイでの米朝拡大会議に突如姿を現した超タカ派のボルトン大統領補佐官(左端) Leah Millis-REUTERS
2回目の米朝首脳会談が物別れに終わった。米側は北朝鮮側が全面的な制裁解除を求めたからだと言い、北朝鮮は一部解除しか求めていないと反論。これを中国はどう見るか。朝鮮半島問題に詳しい、中国政府元高官を取材した。
米朝で食い違う物別れの理由
2月27日から28日にかけて華々しく行なわれるはずだった米朝首脳会談は、28日の昼、突然、決裂に終わった。
27日に振りまいた笑顔と打って変わって、トランプ大統領は28日午後、険しい顔つきで「北朝鮮が制裁の全面解除を求めてきたので、それに応じることはできなかった」という趣旨の説明を記者団にした。北朝鮮側は寧辺(ヨンビョン)の核施設の完全放棄だけを条件に制裁の全面解除を求めてきたので、応じるべきではないと判断したとのこと。
それに対して北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、28日から3月1日にかけての深夜1時頃会見を開き「北朝鮮は制裁の全面解除など求めていない」「求めたのは一部解除だ」と反論した。
李外相によれば、「北朝鮮は米国の査察の下で寧辺核施設の完全廃棄を提案したが、これは米朝間の信頼の程度を考えると、現段階では北朝鮮ができ得る最大級の非核化措置である」という。そして制裁解除に関しては、「北朝鮮が解除を求めたのは、あくまでも国連安全保障理事会が2016~17年に採択した決議による制裁のうち民生分野の一部だ」と説明した。すなわち、民間の経済と北朝鮮国民の暮らしを妨げている制裁のみを解除するよう求めた。さらに北朝鮮側は「核実験と長距離ミサイル発射実験を永久に中止すると文書で確約する用意があることも提案した」と明らかにした。ところがアメリカは、「寧辺廃棄以外にもう一つ廃棄すべだとして、最後まで譲らなかった」と、李外相は主張している。
ここで言う「もう一つ」とは何かというと、おそらく昨年のシンガポール米朝首脳会談の前(5月)に出されたアメリカの「科学国際安保研究所(ISIS)」の報告書で明らかにされた「カンソン(KangSong)(降仙)発電所」にあるという第2の秘密ウラン濃縮施設を指しているのではないかと思われる。 カンソンのウラン濃縮施設は、寧辺の2倍のウラン濃縮能力を持つと言われている。
具体的な核施設名は明示しなかったものの、たしかにトランプ大統領は28日午後の記者会見で、「北朝鮮は、われわれ(アメリカ)が知っていることに驚いていた」と述べている。
この「もう一つ」の核施設名は、28日の拡大会議が始まった時に、アメリカ側が突如提起したのではないかと推測される。