最新記事

米朝首脳会談

米朝会談決裂の下手人は「壊し屋」ボルトンか

Trump’s North Korea Deal Fell Apart Because of John ‘Bomb-‘em’ Bolton, Expert Say

2019年3月1日(金)15時30分
トム・オコナー

ボルトンがどのようにして交渉を決裂させたか、その詳細はまだはっきりとしない。しかし、韓国統一部元長官の丁世絃(チョン・セヒョン)は、韓国CBSラジオの取材に対して、会談2日目の28日朝の時点では「ほぼ100%楽観的」だったのに、ボルトンが土壇場で北朝鮮に対し、核兵器だけでなく保有する生物・化学兵器についても報告義務を課すと言い出したために、合意に至らなかったと語っている。

終了後の会見でトランプは、北朝鮮側が「すべての制裁の解除」を求めたと語ったが、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、北朝鮮が要求したのは「市民経済と市民生活を阻害する特定の5項目」だけだ、と説明している。

平和NGO「プラウシェアズ・ファンド」の研究フェロー、キャサリン・キローは本誌取材に対して「どちらかといえば、北朝鮮の説明を信じる」と語った。平壌からハノイまで3200キロ以上の距離を列車で3日もかけてやって来た金正恩が、非現実的な要求をするとは考えにくいと言う。一方、ボルトンは「北朝鮮と交渉はしたくない」はずだとキローは見る。「ボルトンが交渉に関与している以上、慎重に見守らなければならない」

「北朝鮮への先制攻撃」

ボルトンはトランプ政権に参加する以前の昨年2月、米ウォールストリート・ジャーナル紙に「北朝鮮への先制攻撃に関する法的検証」という意見記事を投稿した。民間シンクタンク「戦争なき勝利」のエリカ・フェインは、「bomb them(爆撃しろ)」の異名を取るボルトンが交渉テーブルに着いた以上、トランプがより強硬になったとしても不思議ではないという。

第2回米朝会談の結果に専門家たちはひどく失望しているが、一方では、あまり悲観的な見方に傾き過ぎないように忠告する。北朝鮮研究のNGO「ナショナル・コミティー・フォー・ノースコリア」のダニエル・ワーツは、「トランプと金正恩は交渉テーブルからは去ったが、両国の交渉をつなぐ橋を焼き落としてはいない」と言う。

ワーツは韓国に米朝交渉を仲介する役割を期待しつつ、「米朝両国にとってもこの交渉を崩壊させない方が有益だ。今後数週間~数カ月の焦点は、米朝両国が過去8カ月間維持してきた均衡を引き続き維持できるか、そして今後の交渉で米朝間の溝を埋めて非核化を進展させることができるかだ」と語った。


※3月5日号(2月26日発売)は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集。アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)とは、アマゾンが引き起こす市場の混乱と変革のこと。今も広がり続けるその脅威を撤退解剖する。ベゾス経営とは何か。次の「犠牲者」はどこか。この怪物企業の規制は現実的なのか。「サバイバー」企業はどんな戦略を取っているのか。最強企業を分析し、最強企業に学ぶ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中