データの有効活用で豊かな医療社会を実現する
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エンサイスの代表取締役社長・木村仁氏(左)と、Veeva SystemsのCEO・ピーター・ガスナー氏(右)
<日本の医薬品産業をデータソリューションで支援するエンサイス株式会社と、ライフサイエンス分野においてクラウドベースのソフトウェアをグローバルに提供する米企業Veeva Systems(ヴィーバ・システムズ)。両社のトップは、日米の医療制度と医薬品産業が変化の時期を迎えたと感じている。ニューズウィーク日本版は今回、Veeva Systems(以下、Veeva)の創業者でCEOのピーター・ガスナー氏と、エンサイスの代表取締役社長・木村仁氏の対談を企画した>
日米の医療用医薬品分野における課題と、新たなトレンド
──さっそくですが、Veevaとエンサイスが2015年2月に開始した業務提携の背景についてうかがいます。そこに至るまでの日本の医療用医薬品業界と社会の状況や課題について教えていただけますか。
木村仁氏(以下、木村) 少子高齢化は日本の最大の課題の一つです。高齢化が進むと医療費は増え、少子化が進むと生産人口が減り、医療の財源も減っていきます。国民皆保険を運用するのが次第に厳しくなっていくのは分かっていました。したがって、医薬品を含めた医療費に対するプレッシャーがかかり、医薬品産業はそれに応えなければならない。一方で、技術進歩も加速度的に進んでいます。あまり目には見えませんが、従来の化合物とは異なるバイオ医薬品などが、すでに新薬の主流となっています。このような医薬品は患者さんの遺伝子により有効性が異なる場合もあり、高額でもあります。
このような環境では、患者さんの病気が進行する前にいかに早く診断し、いかに正確な医薬品を使い、早く治していただくかが、患者さんの健康と国民の医療費の負担の低減の両立につながります。ですから、製薬企業が、以前のような病気が顕在化した患者さんを診る医師をたくさんのMRが奪い合う活動から、その医薬品に合う患者さんが通う医師を中心とする医療従事者に、ピンポイントに、正しく、早く、効率的に情報を伝える活動に注力する世界に移行する転換点に今はあります。
つまり、医薬品産業は、これまでのローラー的な営業から脱却し、飛躍的に生産性を高めなければならない産業の代表と言えます。ですので、エンサイスがもつ膨大なデータはより重要な役割を担います。
ただその時に、データはあっても、活用できなければ意味がありません。実際にはソフトウェアやアプリケーションを使ってデータを見える化し、分析し、効果的で効率的な活動を示唆し、行動の意思決定を支援して、初めて本当の意味でデータを活用しているといえるわけです。VeevaのCRMソフトウェアは、見える化に優れているだけでなく、製薬企業の自社の活動の情報が蓄積されています。さらに蓄積するにとどまらず、活動データとエンサイスの市場データの関係を分析することにより、生産性の向上に貢献出来ます。そのため、世界の医薬品産業で最も普及しているクラウド型のソフトウェア会社のVeevaと組む必要があったのです。
──日本と比較した米国の医療社会の状況や課題はいかがでしょうか。
ピーター・ガスナー氏(以下、ガスナー) アメリカには独特な医療制度があり、ライフサイエンス企業の観点からすると、複数ある保険会社が公契約を担っています。他の国、たとえば国民皆保険の日本であれば政府が保険を支払うシステムです。アメリカでは、民間企業と政府の両方が保険を支払うという複雑なシステムになっています。
現在は2つのトレンドがあります。第1は、個人の病状に合わせてカスタマイズされたスペシャリティ医薬品が増えてきています。たとえば、遺伝子に基づいて投与が決まる薬や、ごく狭い領域の病状に対応する医薬品などで、これは非常にコストがかかります。それを負担するのは、政府なのか、それとも保険会社か、もしくは個人の自由診療になるのか、といったことが大きな問題になっています。
第2のトレンドとしては、保険会社が医療行為や医薬品に対して払うのではなくて、患者さんがそれによってどれだけ回復したか、治癒したかに応じて払うという傾向があります。こうした2つのトレンドにより変化する業界のニーズに対応しながら、今後もシステムを提供していかなければいけないという状況です。