日本の子どもの自殺率が2010年以降、急上昇している
子どもの自殺の心理として、「苦しみが永遠に続くという思い込み」「心理的視野狭窄(自殺以外の解決手段が浮かばなくなる)」というものがある(文科省『教師が知っておきたい子どもの自殺予防マニュアル』2009年)。こうした認知の歪みを是正する必要がある。
それでは、子どもの自殺動機にはどのようなものが多いのか。いじめを苦にした自殺が多いと思われるかもしれないが、データで見るとそうではない。過去5年間の小・中学生の自殺動機を示すと、<表1>のようになる。延べ数467件の内訳だ。
首位は「家族からのしつけ・叱責」、2位は「親子関係の不和」、3位は「学業不振」となっている。いじめや学友との不和よりも、家族関連の要因が多いことが分かる。
日本の人口構成が逆ピラミッドになる中、子どもへの期待圧力が強まっている。過度の期待で子どもを自殺未遂に追い込んだ親の事例もあるが(「神童に過度の期待、子供の自殺未遂で気づいた親の愚かさ」NEWSポストセブン、2019年2月23日)、養育態度の歪みには注意しなければならない。
少なくなった子どもが大事に育てられる時代と言われるが、「生きづらさ」の指標とも言える自殺率をみると、<図1>のグラフの通りだ。あと少ししたら人口比の上で「子ども1:大人9」の社会になるが、その時にはどうなっているか。
「教育に関心がある」などとあまり言わないほうがいい。教育については誰もが語れるが、逆ピラミッドの人口構成で「一億総教育家」の社会になったら、子どもは潰されてしまう。自殺対策の重点は子どもに移すべきだが、教育の重点は子どもから大人にシフトするべき時だ。人生100年、かつ変動の激しい現代では、全てのステージの人が生涯、絶えず学習を続けなければならない。
<資料:厚労省『人口動態統計』、
警察庁『自殺の状況』>
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら