明暗分かれた金正男暗殺実行犯2人 インドネシア・ベトナム両国の温度差と人権感覚が背景か
マハティール首相との個人的関係も影響か
イスラム教を国教とするマレーシアとイスラム教国ではないが世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア。両国は共に東南アジア諸国連合(ASEAN)の指導的立場であり、特にベテランの政治指導者であるマハティール首相とインドネシアのジョコ・ウィドド大統領は個人的にも良好な関係を維持している。こうした背景もアイシャさんの釈放に少なからず影響を与えたとの見方も出ている。
起訴取り下げ要求が却下されたフォン被告は体調を悪くしていることに加え、精神的検査も受けているとされ、そのショックは想像以上に大きいと言われている。
マレーシアでは検察当局、裁判所がなんら理由を明らかにせずにインドネシア人被告の釈放、起訴取り下げ却下を決めたことで、司法への不満や不信もくすぶり始めているという。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など