許せない! オランウータン母子襲われ子は栄養失調死、親は銃弾74発受け重傷
保護された母オランウータンの身体には多数の弾丸が残っていた Sutopo Purwo Nugroho via Twitter
<かつて密林を自由に移動していた「森の人」。開発で住むところを追われ、絶滅の危機で保護が叫ばれているのに容赦なく命を狙われる──>
インドネシア・スマトラ島最北部のアチェ州にある自然保護区域でオランウータンの親子が保護された。このうち子供の方は栄養失調で死亡、母親も検査の結果、体内に74発もの空気銃の弾が撃ちこまれ、また複数の刃物による傷を負っていることがわかった。英字紙「ジャカルタ・ポスト」が伝えた。
北スマトラ州の州都メダンにある環境保護団体「持続可能なエコシステム基金」の関係者によると、このオランウータン親子はアチェ州内の保護区域付近のプランテーションで働く労働者に襲撃され、3日間に渡って逃げ回ったという。
3月10日に「ひどい怪我をしたオランウータンの親子がいる」という通報がアチェ州スルタン・ダウラット郡のブンガ・タンジュン村の住民からあり、同州自然保護庁の担当者が駆けつけて「スマトラ・オランウータン」の親子を保護したという。
襲撃はその2日前にあったとみられ、推定年齢30歳の母親は子を守りながら労働者から逃れるためエサをとる時間もなく、また負傷していたことから体力も衰えながら、逃げて来たとみられている。
このため生後一カ月とみられる子供は逃げる最中に食べたり水分をとったりできなかったため、保護直後に死亡したという。死因は栄養失調と脱水症状とみられており、その亡骸は保護団体関係者によって丁寧に埋葬されたという。
新種発見され3種、いずれも絶滅の危機
インドネシア語で「森の人」を意味するオランウータン。人に最も近い大型類人猿とされ、インドネシアのスマトラ島北部とカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)のインドネシア領とマレーシア領などにだけ生息し、スマトラ島に約9200頭、カリマンタン島に約1万2000〜1万5000頭(うち約80%がインドネシア領内に生息)がいると推定される絶滅の危機に瀕した動物だ。
これまで「スマトラ・オランウータン」と「ボルネオ・オランウータン」の2種が確認されていたが、2017年11月にアチェ州の南側にある北スマトラ州タパヌリ地方で、遺伝子(DNA)や頭蓋骨の骨格、歯などがこれまで確認されている2種と異なるオランウータンがスイス、英国、インドネシアなどの国際調査チームによって発見、確認されたことが学会誌で発表された。
この88年ぶりとなる新種のオランウータン発見は国際的なニュースとなり、発見された場所の名前にちなみ「タパヌリ・オランウータン」と名付けられた。