ハノイ米朝会談、なぜ金正恩は何千キロもの「鉄道旅」を選んだ?
北朝鮮の金正恩委員長はベトナムのハノイでトランプ米大統領との会談に臨む。写真はベトナムのドンダン駅に列車で到着した金委員長。2月26日、ドンダンで撮影(2019年 ロイター/Stringer)
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を乗せ、ベトナム国境の駅ドンダンに26日到着した特別列車は、赤と黄色の機関車に引かれていた。その車体には、中国国有鉄道のロゴがはっきり描かれていた。
トランプ米大統領との会談のため、金委員長が開催国へ外遊するのは今回で2度目だが、どちらも中国から提供された輸送手段でやって来た。これは国際舞台に立て続けに登場することになった若き指導者が、より強力な近隣の大国にいかに頼っているかの表れだ。
金委員長は昨年6月、中国の国旗が描かれた中国国際航空の旅客機に乗り、史上初となる米朝首脳会談の開催地シンガポールへ向かった。
南北国境の板門店で行った文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との2度の会談を除き、中国の習近平国家主席との初会談、そして今回のトランプ大統領との2度目の会談では、ともに中国が提供した機関車が使われた。
「これは習主席からのフルサービスだ」と、韓国の情報機関にいたNam Sung-wook氏は言う。「金委員長は、中国による特別待遇がなければ現地まで行けなかった」
習主席との会談のため、これまで4度訪中した金委員長は、いずれも特別列車で北京へ向かった。客車を引いたのは中国製の緑色の機関車「東風11Z型」。車体には国有鉄道会社の中国鉄路総公司のロゴが描かれ、少なくとも3つの異なる登録ナンバーが記されていたことが、メディアの写真から明らかになっている。
2018年3月の初訪中で使用されたのは、中国高官を乗せた客車を引くために使われる機関車だった。韓国メディアは、北朝鮮との国境沿いにある中国の丹東で、金委員長の列車に接続されたと報じた。
金委員長がベトナム入りした際の機関車は赤と黄色の「東風4型」で、23日に北朝鮮から中国に入った際に使用されていた11Z型よりも旧式のものだった。
中国が機関車をいつ、どのような形で北朝鮮に提供したのかは不明だ。
中国外務省の陸慷報道官は、特別列車をけん引する機関車が途中で変わったこと、さらに中国が機関車を北朝鮮に提供したのかどうかについて聞かれると、そのようなことにあまり注意を払っていないと回答した。「機関車が変更されたかどうかによって、状況に対する評価に何か特別な意味を与えるのか私には分からない」と、26日の定例記者会見で語った。
報道官はその一方、中国が金委員長の列車移動に「輸送保証」を提供したことを明らかにした。詳細は語らなかったが、列車がスムーズに中国を通過することを保証したものとみられる。