ミャンマー国軍最高司令官、朝日新聞の記事に抗議 単独会見記事の事前確認、朝日側「約束した認識はない」
メディア委が近く実態調査に
ミン・アウン・フライン司令官からの訴えを受けたMPCでは3月1日に事実関係の調査のために「双方から事情を聞きたい」としている。
2月15日の朝日新聞には貝瀬アジア総局長と染田屋支局長による連名の記事が掲載されている。
日本の新聞社、テレビなどの場合、海外の元首、大統領や首相、キーマンとなる最高レベルの軍人などの会見が単独で可能となった場合は、本社から部長や編集局長などの幹部あるいは地域を統括する総局長などが同伴して「社を挙げての単独会見」をアピールすることがよくあり、今回も朝日新聞としては力の入った「単独会見記事」だったことがわかる。
しかし、取材が難しいとされるミャンマー軍司令官との単独会見のわりには紙面の扱いは地味で、3面左肩に約3段見出しで「『軍人の議会参加必要』ミャンマー国軍最高司令官」「民主化への改憲 否定的」と本記が掲載されている。さらに3面を受ける形でインタビュー詳報が国際面のトップで「政治への関与 譲らぬ軍」「スーチー氏側を牽制 国際社会と溝深く」「難民の帰還 厳格な審査言及」などの見出しで掲載されている。
司令官の意見が反映されず不満か
ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン司令官は自らのホームページで朝日新聞とのインタビューの全文を英語とミャンマー語で掲載、公開している。
そこにはミン・アウン・フライン司令官がスー・チー顧問によって進められている憲法改正に全面的にそれも闇雲に反対している訳ではなく、理路整然と軍の主張を繰り返していることが記録されている。
さらにロヒンギャ問題に関して朝日新聞側は「これは質問ではなく個人的意見である」と断った上で「一部の人々は意図的にミャンマーや国軍を一方的に批判しているがこれは公平ではないと思う」と述べ、「(バングラデシュ側にある)難民キャンプを取材したが、難民の証言は事実ではない」との見解を示すなど、国軍の行動を追認、支持するかのような趣旨の誤解を招きかねない表現を使っていることも明記されている。
この点に関して朝日新聞社広報部(東京)は2月25日、「今回のインタビューで国軍の行動を是認する意図はありません」との見解を示している。
こうした長尺のインタビューにも関わらず、朝日新聞の掲載された記事では「憲法改正に反対」「ロヒンギャ問題で反論」など発言の一部だけが切り取られて記事化されていることに司令官、軍が不満をつのらせ、実際は事前の原稿チェックの約束は朝日新聞と司令官の間にはなかったものの、「約束違反だ」と主張している可能性もあると現地のミャンマー人記者たちはみているという。
いずれにしろ、MPCによる今後の調査でなんらかの打開策が見出されるのか、朝日新聞側の対応を含めて成り行きが注目される。