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沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody

辺野古「反対多数」 沖縄ルポで見えた県民分断のまぼろし

OKINAWAN RHAPSODY

2019年2月25日(月)11時20分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

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嘉手納基地の近くを飛ぶ軍用機(沖縄本島中部の北谷) PHOTOGRAPH BY KOSUKE OKAHARA FOR NEWSWEEK JAPAN

自宅があるうるま市から那覇まで通う1時間半のバスの中から、いろいろな風景が見えるという。路上から基地も見える、観光地も見える、そして車内には県民投票の広告も見える。そんな日常の延長に彼女の思いもある。

投票に行くという。言いたくなければ言わなくていい、と前置きして何に投じるか聞いた。数秒の沈黙のあと「うん......。誰かと討論するわけじゃないですからね」と自分を納得させるようにつぶやき、こう続けた。「今回は反対に入れるつもりです」と。

県民投票までの道のり

宮里が直木賞フィーバーに直面していたのと同時期に県民投票の全県実施を求めてハンガーストライキを決行していた元山仁士郎(27)もまた、この島の「複雑」さを生きる1人だ。

「辺野古」県民投票の会代表である元山の行動は県外でも大きく報じられ、反響を呼んだ。私たちの取材の前夜には、那覇市内でウーマンラッシュアワーの村本大輔、社会学者の宮台真司ら著名人とのトークイベントに登壇していた。このインタビューの前にも、別のメディアから取材を受けていた。

辺野古の海の埋め立て工事を県民投票まで停止するようホワイトハウスに求める署名をタレントのローラが呼び掛けるなど、昨年末から「沖縄の基地問題」について東京でも一時期報道が盛り上がっていた。元山の抗議もこうした文脈の中で注目されていた。そこに投影される像は「沖縄の若きオピニオンリーダー」だ。

そんな彼が、どうして「複雑」さを生きているのか。

グループの事務所は沖縄を縦断する基幹道路、国道58号線沿線にある。事務所にあふれていたのは、カンパ物資だった。27歳にもかかわらず、ある意味で古典的な抗議であるハンストを試みた元山に対して、県内外の各地から送られてきたものだ。貼るタイプのカイロはダンボール箱からあふれ、塩は別の棚に並んでいる。

事務用の机の上には、刷り上がったばかりのポスターがあった。シンプルに「県民投票 224」「投票に行こう」と書いてある。元山は「県民投票は賛成のため、反対のためではなく、意思を示すもの。自分たちの世代が話したり、考えたりするきっかけにしたかった」と言う。

彼はかつて活動を共にしていたSEALDs――社会運動をリードした学生団体――に通じる言い方で現状を解説する。それは「公式」の声だ。

元山にはもう1つ「元山先生の息子」という顔がある。基地がある宜野湾市で育ち、普天間高校時代は野球部主将。両親は既に離婚し、母親と暮らしているが、父親と会うこともある。その父というのが、沖縄女子短期大学で教鞭を執り、保守系の考えを公言する元山和仁なのだ。

「県民投票の関係で宜野湾市議会や県議会に行くと『おっ、元山先生の息子。頑張ってるな』って自民党系の議員さんから声が掛かりますよ」

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