最新記事

人権問題

バンコクで不明のベトナム人権活動家、タイ当局捜査開始 人権問題めぐり国際社会の批判を危惧?

2019年2月12日(火)17時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ベトナム当局に拉致されたとみられるトゥルオン・ドゥイ・ナット氏 フェイスブックより

<ベトナム当局による拉致の疑いが高まっている人権活動家に対して、渡航先のタイでは、捜査当局が捜査を始めたが──>

タイ・バンコク郊外のショッピングセンターで1月26日に突然行方が分からなくなり、その後の消息が途絶えているベトナム人の人権活動家でブロガーの男性について、タイ警察当局、入国管理当局が捜査に乗り出すことになった。

当初静観していたタイ当局は、国内外の人権団体や国際社会からの要請を受けて方針を転換した。その背景には1月以来タイで続く、中東からの難民申請者への一連の対応が厳しい批判を受けたこともあるとされており、米政府も今回の捜査開始を歓迎する姿勢を明らかにしている。

行方不明となっているのはベトナム人のトゥルオン・ドゥイ・ナット氏(55)で、ベトナム国内で人権問題などをブログで発信、治安当局による逮捕を逃れるためにタイ入りしてバンコクの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で難民申請の手続きを始めていたとされる。

ところが手続き開始直後の1月26日にバンコク北にある大規模商業施設「フューチャー・バーク・モール」内のアイスクリーム店付近で突然行方が分からなくなったという。

人権団体やナット氏が定期的に寄稿していた「ラジオ・フリー・アジア」関係者などによると、ナット氏はベトナム治安組織関係者によって「拉致」された可能性が極めて高いという。

ロイターやタイ地元紙が伝えたところによると、国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」やタイのベトナム人支援組織などは「ナット氏はすでにベトナム国内に連行されて、拷問などの不当な扱いを当局に受けていることが考えられる」と指摘。

また別のベトナム人国外活動家は「ナット氏は生存していると思われるが、極めて危険な状況にあるといえる」としており、ナット氏がすでにベトナム治安当局によって、拉致された後ベトナムに連行され、現在は憂慮すべき状態にあるとの認識を示した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、6会合連続利下げ 貿易戦争で「異例の不確実

ビジネス

IMF、経済成長予測を大幅に下方修正へ 世界的な景

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ビジネス

トランプ氏、FRBに利下げ要求 パウエル議長解任「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 8
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 9
    「体調不良で...」機内で斜め前の女性が「仕事休みま…
  • 10
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中