最新記事

フランス

仏領ギアナ、ロケット打ち上げの下で貧困は続く

Fired Up

2019年2月12日(火)16時40分
キャサリン・ハイネット

フランスは17世紀以降、何世紀にもわたりギアナの植民地化を推し進めた。流刑植民を行い、囚人を送り込んだ時代もあった。今は人気の観光地になっているディアブル島も、53年までは流刑地だった。

仏領ギアナの海辺に近いマルマヌーリ村に宇宙センターが建設されたのは60年代のこと。このとき、それまで村に住んでいた651人が立ち退かされたと、イデールクリブスキは言う。そのほとんどが先住民だ。

宇宙センターが開設されて以降、隣接する都市クールーは、社会階層と人種によって明確に分断された町になったと、イデールクリブスキは指摘する。宇宙センターのそばと海岸沿いには、フランス人のエンジニアと教師、そして外国人移住者が住んでいる。それに対し、多くの先住民は、宇宙センターから離れた地区で暮らしている。

それでも、欧州宇宙機関(ESA)によれば、仏領ギアナで働いている人の約15%が直接もしくは間接的に宇宙産業の仕事に従事しているという。宇宙産業が人口30万人足らずの仏領ギアナで生み出した雇用は4600人に上ると、フランス政府も推計している。

ESAと共にギアナ宇宙センターを運営するフランス国立宇宙研究センター(CNES)も、仏領ギアナの社会・経済開発を支援するために5000万ユーロを拠出した。

ロケット打ち上げ企業のアリアンスペース社など、ヨーロッパの多くの宇宙関連企業も雇用をつくり出している。アリアンの広報担当者によれば、同社は納税や慈善事業(大学奨学金など)でも地元に貢献しているとのことだ。

しかし、リマネに言わせれば、フランスは地元の人々に犠牲を強いて宇宙センターに投資している。「宇宙センターの内部だけが特権的な場になっていて、ギアナの現実とはまるで別世界だ」と、リマネは言う。

それでも宇宙事業は進む

仏領ギアナは、生活コストが著しく高い。16年の1人当たりGDPはフランス本土の半分に満たないが、食品の価格は45%も高い。しかも、15~24歳の人口の40%が失業しており、就学率も低いと、イデールクリブスキは言う。

宇宙センターはテクノロジーの粋を集めた施設だが、仏領ギアナの人々はテクノロジーへのアクセスの面でも極めて不利な状況に置かれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中