最新記事

自動車

米国、高級ピックアップトラックが好調 ビッグスリー雇用の命綱に

2019年2月11日(月)14時09分

威風堂々

大型ピックアップのセグメントで首位に立つフォードは、今年後半にFシリーズ「スーパーデューティ」に、7.3リットルのガソリンエンジンを搭載したバージョンを発売する。フォードの標準的なセダン「フュージョン」のエンジンに比べ、排気量は3倍以上だ。

フィアット・クライスラーの「ラム」ブランドでは、大型ピックアップの改良版に力を入れており、オプションとして、12インチのディスプレイ画面のほか、3万5000ポンドのトレイラーをけん引可能な1000ポンド・フィートのトルクを発生する排気量6.7リットルのカミンズ社製ディーゼルエンジンを提供している。

GMで大型ピックアップ/スポーツタイプ多目的車(SUV)担当のチーフエグゼクティブ・エンジニアを務めるティム・ヘリック氏によれば、同社の大型ピックアップ「シルバラード」「GMC」は、新型のディーゼルエンジン、10段変速のトランスミッション、「優に3万ポンドを超える」トレイラーけん引能力を備えることになるという。

フリント工場の組立ラインが送り出す新型ピックアップは、同じラインで生産された旧モデルとは別物だという。旧モデルに比べて車高は高く、印象的なフードやグリルを備えている。

ヘリック氏は「ピックアップには堂々とした見栄えがほしかった」と言う。

投資負担も巨大化

ビッグスリーは、大型ピックアップの販路を商業用途・作業用途の顧客以外にも広げていこうと大規模な投資を進めている。

各社とも、「ラム」ブランドの「ララミー・ロングホーン」、フォードの「リミテッド」、シボレーの「ハイ・カントリー」といった具合に、大型ピックアップに高級仕様車を用意している。

GMは複数車種をそろえた高級ピックアップのサブブランドとして「GMCデナリ」を開発した。GMCのグローバルブランド責任者を務めるダンカン・アルドレッド氏はロイターに対し、現在GMCブランドによる大型ピックアップの6割はこの「デナリ」シリーズとして販売されていると語った。ディーゼルエンジン搭載のバージョンは定価7万ドルを超える。

大型ピックアップに適用される連邦燃費規制は、より小型のピックアップやセダンの場合とは異なっている。商用トラックを対象とする、さほど厳格ではない基準の対象となっており、業務用ゆえに燃料消費が多くなることが認められている。また小型ピックアップの場合とは異なり、価格表示の際に参考燃費が添えられていない。

大型ピックアップの販売が伸び、高級志向が強まる中で、二酸化炭素排出量の削減を求める活動家からは、こうした個人利用の大型ピックアップへの批判が出始めている。

自動車安全センターのダン・ベッカー氏は、「フォードの新しい巨大ピックアップは、7.3リットルのエンジンを積んでいるのだから、フォード『バルディーズ(原油流出事故を起こしたタンカーの名前)』という名で販売されるのがふさわしい」とあるメールで書いている。

GMのベテラン従業員、41歳のランディ・ランドールさんのような労働者にとって、フリント工場でGMの新しい大型ピックアップ生産の担当になることは一筋の希望の光だ。ランドールさんはレイオフの対象になるたびに複数のGM工場を渡り歩いてきたという。現在彼は、フリント工場の組立ラインの最終工程で製品の検査に携わっている。

ランドールさんは、「GMC」ブランドのピックアップの前方に置かれた画面に、その車両が検査に合格したことを示すメッセージが表示されるとほほ笑んだ。「この車には明るい未来がある」と彼は言う。

(翻訳:エァクレーレン)

Nick Carey and Joseph White

[ディケーター(テキサス州)/フリント(ミシガン州) 5日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中