米国、高級ピックアップトラックが好調 ビッグスリー雇用の命綱に
威風堂々
大型ピックアップのセグメントで首位に立つフォードは、今年後半にFシリーズ「スーパーデューティ」に、7.3リットルのガソリンエンジンを搭載したバージョンを発売する。フォードの標準的なセダン「フュージョン」のエンジンに比べ、排気量は3倍以上だ。
フィアット・クライスラーの「ラム」ブランドでは、大型ピックアップの改良版に力を入れており、オプションとして、12インチのディスプレイ画面のほか、3万5000ポンドのトレイラーをけん引可能な1000ポンド・フィートのトルクを発生する排気量6.7リットルのカミンズ社製ディーゼルエンジンを提供している。
GMで大型ピックアップ/スポーツタイプ多目的車(SUV)担当のチーフエグゼクティブ・エンジニアを務めるティム・ヘリック氏によれば、同社の大型ピックアップ「シルバラード」「GMC」は、新型のディーゼルエンジン、10段変速のトランスミッション、「優に3万ポンドを超える」トレイラーけん引能力を備えることになるという。
フリント工場の組立ラインが送り出す新型ピックアップは、同じラインで生産された旧モデルとは別物だという。旧モデルに比べて車高は高く、印象的なフードやグリルを備えている。
ヘリック氏は「ピックアップには堂々とした見栄えがほしかった」と言う。
投資負担も巨大化
ビッグスリーは、大型ピックアップの販路を商業用途・作業用途の顧客以外にも広げていこうと大規模な投資を進めている。
各社とも、「ラム」ブランドの「ララミー・ロングホーン」、フォードの「リミテッド」、シボレーの「ハイ・カントリー」といった具合に、大型ピックアップに高級仕様車を用意している。
GMは複数車種をそろえた高級ピックアップのサブブランドとして「GMCデナリ」を開発した。GMCのグローバルブランド責任者を務めるダンカン・アルドレッド氏はロイターに対し、現在GMCブランドによる大型ピックアップの6割はこの「デナリ」シリーズとして販売されていると語った。ディーゼルエンジン搭載のバージョンは定価7万ドルを超える。
大型ピックアップに適用される連邦燃費規制は、より小型のピックアップやセダンの場合とは異なっている。商用トラックを対象とする、さほど厳格ではない基準の対象となっており、業務用ゆえに燃料消費が多くなることが認められている。また小型ピックアップの場合とは異なり、価格表示の際に参考燃費が添えられていない。
大型ピックアップの販売が伸び、高級志向が強まる中で、二酸化炭素排出量の削減を求める活動家からは、こうした個人利用の大型ピックアップへの批判が出始めている。
自動車安全センターのダン・ベッカー氏は、「フォードの新しい巨大ピックアップは、7.3リットルのエンジンを積んでいるのだから、フォード『バルディーズ(原油流出事故を起こしたタンカーの名前)』という名で販売されるのがふさわしい」とあるメールで書いている。
GMのベテラン従業員、41歳のランディ・ランドールさんのような労働者にとって、フリント工場でGMの新しい大型ピックアップ生産の担当になることは一筋の希望の光だ。ランドールさんはレイオフの対象になるたびに複数のGM工場を渡り歩いてきたという。現在彼は、フリント工場の組立ラインの最終工程で製品の検査に携わっている。
ランドールさんは、「GMC」ブランドのピックアップの前方に置かれた画面に、その車両が検査に合格したことを示すメッセージが表示されるとほほ笑んだ。「この車には明るい未来がある」と彼は言う。
(翻訳:エァクレーレン)
[ディケーター(テキサス州)/フリント(ミシガン州) 5日 ロイター]
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