予想外に複雑な日中韓の三角関係──韓国は日本より中国に傾く
A TRIANGULAR AFFAIR
北京で会談した文在寅大統領(左)と習近平国家主席(17年) Nicolas Asfouri-Pool-REUTERS
<朝鮮半島統一を望む韓国の焦りを習近平が巧みに利用できるとは限らない>
アジア太平洋地域には、地政学的に微妙なバランスを保つ三角関係がいくつかある。例えば、日米中の三角関係。米中ロの三角関係、米中印の三角関係もある。
そこに近年、新たな三角関係が加わった。日中韓だ。その背景には、中国の台頭と地域経済の統一、核を利用した北朝鮮の瀬戸際外交、ドナルド・トランプ米大統領のギャンブル的な外交など複数の要因がある。
従軍慰安婦問題や徴用工問題をめぐる最近の日韓の対立悪化は、中国の目には、韓国を自らの影響下にたぐり寄せるチャンスと映っているだろう。もちろん中韓の間にも、対立のタネはある。その最大のものは南北朝鮮の統一だ。中国はこれに断固反対している。
朝鮮半島が統一され民主化されれば、中国は北朝鮮という戦略的緩衝地帯を失うことになる。韓国がアメリカと軍事同盟を結んでいることも、中国にとっては厄介な問題だ。韓国が米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備して、中国から手厳しい経済報復を受けたのは、さほど昔の話ではない。
だが現時点で、日韓の亀裂拡大は、中国にとっての好機だ。うまく立ち回れば、習近平(シー・チンピン)国家主席は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対して一段と大きな影響力を持つようになるかもしれない。そして、それは必ずしも日本の安倍晋三首相にとって不利にはならないかもしれない。
アメリカとの関係悪化を受け、習は最近、安倍に急接近しており、19年中には訪日も計画している。それだけに、たとえ朝鮮半島における中国の影響力を強化するとしても、これまで進めてきた日本との関係修復を無にしないよう十分注意を払うだろう。このため習は、2つの戦略を同時に進めている。日本に対しては、引き続き「仲直りモード」を維持すること。韓国に対しては、なんとか半島統一を実現したい文の焦りを利用することだ。
トランプのギャンブル的試みを別にすれば、国際社会は今も、北朝鮮に対して厳しい態度を維持している。北朝鮮と積極的に関与し続けているのは、韓国と中国だけだ。18年3月以降、文は3回、習は4回、金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談している。習の狙いは、北朝鮮を中国の影響下につなぎ留めておくことだが、文はそれを南北朝鮮の接近を暗に容認している証拠と見なし、歓迎しているに違いない。
中国にとって日本は、依然としてアジアにおける戦略的ライバルだが、韓国は中国の準同盟国か、少なくとも中国の中立的パートナーにできるかもしれない。安全保障の面でも、日本の立場はずっとアメリカに近く、中国の軍事増強を危険視している。これに対して韓国は、中国を軍事的脅威と見なす傾向が小さく、反米感情も強い。