Huaweiめぐり英中接近か──背後には華人富豪・李嘉誠
しかし、スパイ活動に最も敏感なはずのイギリスが、「Huawei製品のリスクを抑える方法があると結論づけた」ということは、実際上、「Huawei製品には情報漏洩のリスクはない」と結論付けたのと同じようなもの。もっとも正式な結果は今年3月か4月に出すらしい。
それでも、EU離脱で危機に晒されているイギリスは、李嘉誠の一声で必ずHuaweiを選ぶにちがいない。
となると、ファイブ・アイズの構図が崩壊することにつながる。
ファイブ・アイズとは、「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド」の5ヵ国が加盟する諜報協定の通称で、各加盟国の諜報機関が傍受した盗聴内容や盗聴設備などを共有するために第二次世界大戦中に締結された。ドイツの通信暗号エニグマを解読するのが初期の目的だった。第二次世界大戦は終結したのだから、今さらファイブ・アイズもないだろうとは思うが、それとなく緩い関係で今でも「同盟国」として幻のようなネットワークを構成している。
しかし、その「同盟国」であるはずのイギリスがHuaweiの5Gシステムを利用するのであれば、ファイブ・アイズ構図は、Huawei問題を通して崩壊していくことになるかもしれない。
トランプ大統領が、習近平国家主席の野望である国家戦略「中国製造2025」を阻止しなければアメリカが世界のトップの座から転落することに気づいて、対中強硬策に出始めたことは高く評価したい。何と言っても言論弾圧をしている国が世界を制覇することだけは阻止してほしいからだ。
攻撃する相手が少し違うのでは?
しかし、Huaweiは民間企業で、中国政府が指定した(監視社会を強化するための)AIに関する5大企業BATIS(Baidu、Alibaba、Tencent、Iflytek、Sense Time)の中にも入っていない。そのことは2月12日付のコラム「中国のAI巨大戦略と米中対立――中国政府指名5大企業の怪」に書いた通りだ。これら5大企業は中国政府に要求されるままに情報をすべて提供している。しかしHuaweiはその命令に従わないので、中国政府指定の企業には入っていないのである。
また昨年12月30日付のコラム「Huawei総裁はなぜ100人リストから排除されたのか?」で書いたように、改革開放40周年記念大会において、この40年間に中国の経済発展に寄与した民間企業の経営者など100人をリストアップして表彰したのだが、民間企業として最も功績が高いはずのHuaweiは、表彰される100人のリストには入っていなかった。