最新記事

中国

Apple不振で解雇された台湾・鴻海従業員をHuaweiが雇用

2019年2月25日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

5Gを競うHuawei(写真:ロイター/アフロ)

Appleの経営不振で台湾の鴻海(ホンハイ)科技集団・鄭州工場などの従業員が数万人規模で解雇され自殺者も出る中、解雇者全員をHuaweiが雇用している。これにより台湾のHuawei離れは回避できるのか?

鴻海科技集団がiPhone鄭州工場で5万人削減

台湾の電子製品受託製造サービス(EMS)最大手の鴻海(ホンハイ)科技集団(フォックスコン、富士康)が中国大陸の河南省鄭州工場において5万人の従業員をリストラした。AppleのiPhoneの販売が不振であることから、鴻海の郭台銘(かくたいめい)総裁は、昨年の7月に、「1年以内に34万人を削減すると決定した」と言っていた。少なからぬ台湾メディアが報道し、それはたちまち大陸のネットを覆っていた。11月に入ると、Appleが鴻海へのiPhone XSとiPhone XS Maxの発注を10%削減したという報道が流れた。

そして「1年以内に34万人削減」という方針の第一報は、春節を待たずに実施に移されたのだ。それがこの鄭州工場の5万人削減である。

中国では、日本のお正月以上に春節を大きな節目として位置づける慣習がある(今年の春節休暇は2月4日~ 2月10日)。出稼ぎに出ている者は手一杯のお土産を抱えて故郷に帰り、都会にいる者はこの期間に思い切り贅沢をする。その直前に、いきなり職を失ったのだからたまらない。中にはビルから飛び降り自殺をする者がおり、5万人が路頭に迷った。中国大陸のネットは、Appleと台湾企業への怒りに溢れた。

鴻海に手を差し伸べたHuawei

ところが、苦境に立たされた解雇者と鴻海の郭台銘に手を差し伸べた者がいる。

Huaweiの任正非総裁だ。

春節の休暇期間が終わるのも待たずに、鄭州工場の解雇された元従業員全てを雇用し、鴻海と大型契約を結んだのである。雇用は鄭州工場に留まらず、やがて解雇が見込まれている鴻海の中国大陸における他の工場にも先手を打って雇用する契約を結んでいった。

深センで2万人という数値が既に報道されており、それは貴陽(貴州省)、成都(四川省)、太原(山西省)、杭州(浙江省)、昆山(江蘇省)、淮安(江蘇省)......などへと広がっていき、中国のネットでは「華為が富士康を救った!」という言葉が溢れ、喜びの動画が飛びかった。

その中の一つ「観察者網(ネット)」の報道をご覧いただきたい。中国の各地に根拠地を置いている「富士康(フォックスコン)」工場の従業員募集状況の一覧表もある。その下にあるグラフは、この雇用により、下落していた鴻海の株が急上昇したという推移を示したものだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中