最新記事

インドネシア

2032年五輪、アジア大会成功させたインドネシアが正式立候補  共同開催目指す韓国=北朝鮮らと誘致合戦へ

2019年2月19日(火)21時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)


2018年のアジア大会での伝統武術「プンチャック・シラット」男子クラスI決勝。ここでもインドネシアが優勝した PERSILAT INTERNATIONAL PENCAKSILAT FEDERATION / YouTube

ジョコ・ウィドド大統領はアジア大会終了後の2018年9月1日、ジャカルタを訪問していたバッハ会長とアジアオリンピック評議会(OCA)のファハド・アル・サバーハ会長と大統領宮殿で会談し、アジア大会の成果や2032年のオリンピックについて意見交換した。その後の記者会見でジョコ・ウィドド大統領は「バッハ会長、ファハド会長の2人からアジア大会の成功を称える言葉を頂いた。インドネシアとしてはそうした評価を踏まえて今後、さらに大きな国際大会を招致したいと考えている」と述べ、オリンピック招致に意欲を見せていた。

そして「2032年のオリンピック開催に向けて立候補に必要な書類、手続きを早急に進めたい」として関係各機関への指示を急ぐ方針を示した。

その後、政府部内や関係機関との協議を経て正式に立候補方針が決まり、今回IOCへの書簡提出となった。

「まずは東京で好成績を」と奮起

ジョコ・ウィドド大統領のこうしたオリンピック開催方針の表明にインドネシア国中が「次は東南アジア初のオリンピック開催」と盛り上がりをみせている。そしてそのためには、まず次の2020年の東京オリンピックでインドネシア選手団が好成績を残すことが重要と、各競技団体は選手育成、練習により一層力を入れてようとしている。

アジア大会でメダルラッシュとなったインドネシアの伝統格闘技「プンチャック・シラット」は東京オリンピックの競技種目には含まれていないが、インドネシア開催が決まれば追加種目として認められる可能性もあり、選手は次のアジア大会(2022年中国・杭州)に続いて2032年のオリンピックも見据えて猛練習を続けているという。

ジョコ・ウィドド大統領がこの時期に2032年のオリンピック正式立候補を届け出た背景には4月17日に自らの再選をかけた大統領選が迫っていることもあるとみられている。

国民の大きな希望でもあるオリンピックに正式に立候補したことで、さらなる期待が寄せられてジョコ・ウィドド大統領の人気、支持の追い風となる、との計算が働いたことは否定できないだろう。それも現職大統領の強みであり、野党党首である対抗馬のプラボウォ氏にしてみれば「1本取られた」のではないだろうか。

大統領選の行方と並んでまだ時間は相当あるものの、開催地決定の行方も大きな注目、国民の関心事となることだけは間違いない。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ一時初の4万ドル台、利下げ観測が

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、4月輸入物価が約2年ぶりの

ビジネス

中国の生産能力と輸出、米での投資損なう可能性=米N

ワールド

G7、ロシア凍結資産活用巡るEUの方針支持へ 財務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中