2032年五輪、アジア大会成功させたインドネシアが正式立候補 共同開催目指す韓国=北朝鮮らと誘致合戦へ
ジョコ・ウィドド大統領はアジア大会終了後の2018年9月1日、ジャカルタを訪問していたバッハ会長とアジアオリンピック評議会(OCA)のファハド・アル・サバーハ会長と大統領宮殿で会談し、アジア大会の成果や2032年のオリンピックについて意見交換した。その後の記者会見でジョコ・ウィドド大統領は「バッハ会長、ファハド会長の2人からアジア大会の成功を称える言葉を頂いた。インドネシアとしてはそうした評価を踏まえて今後、さらに大きな国際大会を招致したいと考えている」と述べ、オリンピック招致に意欲を見せていた。
そして「2032年のオリンピック開催に向けて立候補に必要な書類、手続きを早急に進めたい」として関係各機関への指示を急ぐ方針を示した。
その後、政府部内や関係機関との協議を経て正式に立候補方針が決まり、今回IOCへの書簡提出となった。
「まずは東京で好成績を」と奮起
ジョコ・ウィドド大統領のこうしたオリンピック開催方針の表明にインドネシア国中が「次は東南アジア初のオリンピック開催」と盛り上がりをみせている。そしてそのためには、まず次の2020年の東京オリンピックでインドネシア選手団が好成績を残すことが重要と、各競技団体は選手育成、練習により一層力を入れてようとしている。
アジア大会でメダルラッシュとなったインドネシアの伝統格闘技「プンチャック・シラット」は東京オリンピックの競技種目には含まれていないが、インドネシア開催が決まれば追加種目として認められる可能性もあり、選手は次のアジア大会(2022年中国・杭州)に続いて2032年のオリンピックも見据えて猛練習を続けているという。
ジョコ・ウィドド大統領がこの時期に2032年のオリンピック正式立候補を届け出た背景には4月17日に自らの再選をかけた大統領選が迫っていることもあるとみられている。
国民の大きな希望でもあるオリンピックに正式に立候補したことで、さらなる期待が寄せられてジョコ・ウィドド大統領の人気、支持の追い風となる、との計算が働いたことは否定できないだろう。それも現職大統領の強みであり、野党党首である対抗馬のプラボウォ氏にしてみれば「1本取られた」のではないだろうか。
大統領選の行方と並んでまだ時間は相当あるものの、開催地決定の行方も大きな注目、国民の関心事となることだけは間違いない。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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