最新記事

米司法

ロシア疑惑で選挙介入を裏付ける中心的人物が浮上

Manafort's "Russian Brain"

2019年1月26日(土)14時20分
クリスティナ・マザ

ムラー特別検察官(写真)はマナフォートとキリムニクの関係に着目していることを認めた Craig F. Walker-The Boston Globe/GETTY IMAGES

<ロシアの情報機関の一員と目されるウクライナ人キリムニクは、トランプ陣営の選対本部長だったマナフォートから大統領選の投票データを渡されていた>

16年の米大統領選でのトランプ陣営とロシアの「共謀」疑惑で、ムラー特別検察官率いるチームは今、ロシアの情報機関の一員と目されるウクライナ人のコンスタンティン・キリムニクを重要人物とみて捜査を進めている。15日にチームが裁判所に提出した文書で明るみに出た。

トランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォートは昨秋、司法取引に応じて一部の罪を認めたが、その後捜査に協力せず虚偽の供述を行ったとしてまたもや起訴された。マナフォートの弁護団は1月8日、これに抗議する文書を裁判所に提出。この文書は非公開の部分を黒く塗ってあったが、手違いで黒塗り部分も判読可能になっていた。そのおかげで問題となった虚偽の供述の中身が分かった。

マナフォートは選挙戦中にキリムニクに会い、大統領選の投票データを渡した。その際にウクライナ和平案についても話し合ったが、それを捜査官に隠していた、というのだ。

マナフォートが選挙関連の部外秘のデータをロシア側に渡したとすれば、ロシアの選挙介入を示唆する重要な証拠となる。

ムラーのチームは15日、マナフォートの弁護団の主張に対抗する形で裁判所に文書を提出した。それにより、マナフォートとキリムニクの親密な関係がさらに明らかになった。

キリムニクは、マナフォートに不利な証言を行う可能性がある2人の人物を買収しようとした容疑で米当局に起訴されている。捜査チームの文書によると、当初マナフォートはこの証人買収について「キリムニクの嫌疑を晴らそうと」捜査官に嘘をついていたが、現在はキリムニクと共謀しての司法妨害を認めているという。

マナフォートは脱税などで有罪判決を受けたが、量刑は確定していない。大統領の恩赦を期待しているとの見方もある。

マナフォートとキリムニクの関係がロシア疑惑の切り札となるのか、注目される。

<本誌2019年01月29日号掲載>

※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中