日本経済の「輸出けん引」に明確な陰り 安倍政権と日銀に問われるリスク対応力
枠組みを左右する世界経済リスク
政府の経済財政諮問会議は18日の会議で、民間議員が提示した検討課題に海外リスクへの対応が明記された。
19年前半の検討課題の冒頭には「今年は、国際経済状況が不安定化するリスクがある」として、「国際経済のリスクが顕在化した場合には、柔軟で機動的な経済運営を実行する等の対処をすべきである」と書き込まれた。
日銀が発表した昨年10月末の「展望リポート」では、海外リスクに関して、保護主義への言及はほとんどなかったが、23日公表分では、海外リスクが「強まっている」と記述。「企業や家計のマインドへの影響を注視していく必要」との表現も加えた。
市場関係者の間では「日銀は警戒感をあらわにしている」(SMBC日興証券のリポート)との声も出ている。
すでに設備投資マインドには、影響が出ている。11月機械受注はプラス予想に反して落ち込み、10ー12月期は6四半期ぶりの前期比マイナスになる可能性が高まっている。1月ロイター短観でも、製造業のマインドが2年ぶりの低水準に落ち込んだ。
世界経済の先行きを警戒した企業心理の悪化を一段と加速させかねい要因が、もう1つ存在する。米連邦準備理事会(FRB)が、中国の予想を超える減速などに直面した場合、現在の引き締め政策から緩和政策に転換し、その影響が外為市場で円高となって波及してくる経路だ。
デロイト・トーマツの・リスク管理センター長、大山剛氏は、FRBが金融政策を現在の引き締めから中立、もしくは緩和方向にかじを切って、自国景気を支えることになるのではないかと予想。「結果的に金融政策の緩和余地が乏しい日本は、再び円高に苦しみ、輸出産業にとっては厳しい環境となりそうだ」と見ている。
世界の政策当局者は、緩やかな景気拡大というメーンシナリオを維持しているが、米中経済摩擦の長期化など、リスク要因が台頭した場合、にわかに情勢が急変する可能性もある。
すでに輸出競争力が衰え、貿易赤字が基調として定着する兆しが見え始めた日本にとって、リスクシナリオの顕在化に備える「余力」があるのかどうか、政府・日銀の力量が問われそうだ。
(中川泉 編集:田巻一彦)


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