最新記事

中国

米中関係「四十にして惑う」

2019年1月2日(水)21時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

(2) 制限

アメリカは対中政策を「接触」から「競争」に転換したのに伴い、対中制限を強化させている。たとえばアメリカは中国の政治的浸透を制限するために、中国メディアや文化機構(孔子学院や基金会)がアメリカで活動することを制限し始めた。その目的のために中国人の入国ビザ制限を設けたりしている(筆者注:現に米連邦議会上下両院の超党派議員連は、アメリカのAP通信が、中国政府の通信社である新華社との業務提携を強化したことに対して、中国政府のプロパガンダ工作に利用される恐れがあるとして抗議表明をしている。孔子学院に関しては昨年2月28日のコラム「孔子学院が遂にFBI捜査の対象に」で詳述した)。

(3) 圧力

中国企業あるいは個人がアメリカの知的財産権を侵害しているとして、アメリカはネットビジネスやスパイ活動に対して、アメリカが実施しているイラン制裁や北朝鮮への制裁命令に違反するとして司法手続きや制裁を加えることによって中国に圧力を加えている。それ以外に台湾問題や南海(南シナ海)問題などにおいても圧力をかけている。

トランプ陣営の混乱

トランプ陣営には、対中政策に関して5つの派閥があると、評論は続ける。

1.貿易保護主義者:対中貿易赤字に強い関心を持つ一派。

2.戦略保護主義者:中国がアメリカのハイテクを盗み取ろうとしているとしてそれを防止することに強い関心を持つ一派。

3.ウォール街一派:中国の金融市場に進出することに強い関心(筆者注:これに関しては拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』のp.174にある「清華大学の顧問委員会に数十名の米財界CEO」とp.276にある「ウォール街と結びつく習近平」で詳述した。) 

4.国家安全タカ派:中国の戦略と競争し、中国を抑え込もうとしている。

5.国家安全穏健派:中国の軍事現代化、南シナ海、台湾問題などに圧力を加えながら、一方では激しい衝突が起きないようにするとともに、両国関係の安定に危害を及ぼさないようにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY連銀総裁「金融政策はデータ次第」、政府巡る不確

ビジネス

米経済活動、小幅から緩やかに拡大 見通しは楽観的=

ワールド

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意 19日に発効

ビジネス

米CPI、インフレ圧力緩和継続を示唆=リッチモンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中