「平和統一」か「武力統一」か:習近平「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念講話
2019年1月5日 日米に救いを求める台湾の蔡英文総統 Fabian Hamacher-REUTERS
1月2日、習近平は「台湾同胞に告ぐ書」発表40周年記念で講話し、2020年の台湾総統選に向けて「一国二制度」による平和統一を選択しない限り、武力統一もあり得ると脅した。1,2年以内に何かが起きるだろう。
「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念とは
1979年1月1日、鄧小平は「台湾同胞に告ぐ書」を発表した。その日は米中国交正常化が正式に成立した日でもあり、また前年には日中平和友好条約が締結されてもいる。
だから中華人民共和国(大陸側)は、それまで「中国」を代表していた中華民国(台湾)は国連において存在しないとして、「台湾同胞」に呼びかける絶対的に有利な立場に立つに至ったのである。そのことを可能にしたのは大統領再選を狙った当時のニクソン大統領であり、その先兵を務めたキッシンジャー元国務長官である。1971年に忍者外交によって訪中してお膳立てをした。アメリカが、そしてキッシンジャーが音頭を取って「台湾を見捨て、中華人民共和国を国連に加盟させ、結果的に中華民国を国連から追い出し、中華人民共和国を国連に加盟させて」、新たな国際情勢を創り出したのである。
その情勢に乗って発表したのが「台湾同胞に告ぐ書」である。
同書では平和統一を呼びかけ、1949年(中華人民共和国建国)以来、離別した親族がどれほど耐え難い思いで郷愁の念に駆られていたかを訴えた。そして今こそ平和統一により中華民族は一つになろうではないかと呼びかけた。
同時に鄧小平は「一国二制度」を台湾に持ちかけたが一蹴されたので、やむなくこの制度を香港とマカオに適用すべく、当時のイギリスのサッチャー首相に同制度を持ちかけ、香港とマカオで実施されている。
中国では末尾に「9」が付く年になると、元日前後に「台湾同胞に告ぐ書」○○周年記念大会を開催するが、今年は殊のほか、盛大に催された。
1979年1月1日に全人代(全国人民代表大会)常務委員会が同書を発表したことから、毎回この記念大会を主宰するのは全人代常務委員会である。今年も全人代のホームページが40周年記念大会の模様と習近平の講話(全文)を発表している。
平和統一か、武力統一か
前掲の全文を、漢字を拾ってご覧いただければ、おおむねの意味をご理解頂けると思うが、盛んに「和平統一」と「一国両制」という言葉が多いことが字面からも見て取れる。
注目すべきは「第三」の最後のパラグラフで「第四」の直前に「中国人不打中国人」という言葉があり、その下の行に(繁体字に書き直すと)「不承諾放棄使用武力」というフレーズがあることだ。直訳すれば「武力を使用することを放棄するのを承諾しない」となるが、日本語的にスムーズにすると「我々は決して武力行使を放棄しない」という意味である。