最新記事

映画

『ボヘミアン・ラプソディ』動員1000万人目前! 放送禁止だった韓国で大ヒットの理由は?

2019年1月29日(火)08時15分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


ブライアン・メイも韓国での大ヒットに感謝のメッセージを寄せた 20世紀フォックスコリア / YouTube

儲け抜きで1000万人超え目指す?

しかし、ここにきて『ボヘミアン・ラプソディ』の観客動員が足踏み状態になっている。それというのも上映館が減ってきているのだ。また、1月29日からは劇場公開版にはなかったライブエイドのフルバージョンを収録したVODサービスが開始されるのに加え、2月4日から始まる旧正月に合わせて、家族で楽しめる韓国映画や洋画の大作が続々と公開される予定だ。さらに追い打ちをかけるようにブライアン・シンガー監督による未成年へのセクハラ疑惑も発覚した。MeToo運動が日本より大きく取り上げられ、デモや報道などでも盛り上がった韓国だけに、ここにきてのセクハラ報道は観客動員に大きく影響するだろう。果たして、これから先、1000万人超えを達成できるのか注目が集まっている。

『ボヘミアン・ラプソディ』の韓国配給会社である20世紀フォックスコリアは、何とか1000万動員映画にするため、様ざまなイベントを企画しだした。チケット価格を7000ウォン(約700円)に値下げし、さらにチケット1枚買うともう1枚プレゼントする1+1サービス。さらには、一般的に封切り時にだけ行われることが多い「オリジナルポスターのプレゼント」まで。ここまでくると、配給会社は興行収入は二の次で、何としてでも1000万人動員を突破させたいという意気込みが感じられる。また2月には本場イギリスからクイーンのトリビュートバンド「ラプソディ・クイーン」が、ソウル・釜山・光州の3か所ツアーで初の韓国公演をすることが決まっている。

ザ・ショー・マスト・ゴー・オン

果たして、『ボヘミアン・ラプソディ』は韓国で1000万人動員の壁を破れるかどうか。1月26日以降、興行ランキングのトップ10から脱落した現状では厳しいというのが正直なところだが、だがこのヒットはこれで止まるわけではない。『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットを受けて、音楽映画の公開が決まっている。ライブを感じとれる作品としてはBTS(防弾少年団)のソウル公演を収録した『LOVE YOURSELF IN SEOUL』が1月26日公開された。これは韓国のみならずアメリカやフランスなど96か国での公開が決定している。韓国ではコンサートさながらに応援グッズを手にしたファンを中心に観客が映画館へ足を運んでいる。また、5月31日公開のエルトン・ジョンの半生を描いた『The Rocket Man』も『ボヘミアン・ラプソディ』級のヒットを狙えるのではないかと注目を集めている。

『ボヘミアン・ラプソディ』が仮に1000万人突破を果たせなくても、この作品はたくさんの観客が映画館という空間を共有しながら一緒に楽しむという映画の楽しみ方を再確認させてくれた。そのことだけでも、大きな意義ある役割を果たしたといえるのではないだろうか?

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア、クルスク州の完全奪回表明 ウクライナは否定

ワールド

トランプ氏、ウクライナへの攻撃非難 対ロ「2次制裁

ワールド

イラン南部の港で大規模爆発、14人死亡 700人以

ビジネス

アングル:ドバイ「黄金の街」、金価格高騰で宝飾品需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中