最新記事

映画

『ボヘミアン・ラプソディ』動員1000万人目前! 放送禁止だった韓国で大ヒットの理由は?

2019年1月29日(火)08時15分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


なりきり動画やコスプレしての観賞などの盛り上がりを伝える現地メディア JTBC News / YouTube

大ヒットの理由は国民性?

そんな経緯があったにもかかわらず、なぜ韓国でも『ボヘミアン・ラプソディ』はこのように大ヒットしたのか? 一つの要因としては、日本と同様にクイーン世代はもちろん、20〜30代にもこの映画が受け入れられた点がある。クイーンの音楽を聴いていた世代は劇中曲やその曲のビハインドストーリーを楽しむ一方、若者世代はフレディー・マーキュリーの生き方や流されない考え方、自分を突き通す生き方に共感しているようだ。

実際、2018年11月24日に行われたフレディー・マーキュリー没後24周年記上映では、フレディーのコスプレをして来場した客やライブシーンでの旗を振り回すパフォーマンスをした客は皆若い世代だった。映画のヒットに合わせて、クイーン・マンジンチャン(퀸망진창)やクイーン・ボン(퀸뽕)、クイーン・チグァンイ(퀸치광이)など、映画を見た若者を中心に「クイーンに魅せられてハマってしまった人」を指す新造語がネットを中心に誕生。また、3面のスクリーンを駆使し正面+左右のスクリーンで映画を楽しむScreenXでの上映も若者を中心に人気を集めた。

一方、日本では「応援上映」と呼ばれる上映中の手拍子、拍手や一緒に歌ったりコスプレ入場が可能な上映が増えている。1度目は一般上映で映画を見た観客が、2度目、3度目は「応援上映」で映画に自ら参加して鑑賞するということも多い。また、一般的にアクション映画やアニメーション上映に向いてる4DXでも上映されている。さらには音楽ライブ用の音響機材を使って大音量で上映する「爆音上映」も人気だ。アメリカでも「Sing Along」と呼ばれる「応援上映」が増えている。劇中に曲が流れるとカラオケのように歌詞字幕が登場し、観客が一緒になって歌える上映方法だ。各国の動向を見てみると、映画に観客が参加するスタイルが広く受け入れられているように思う。これからの映画館の在り方は観客との一体化が鍵となっていくのだろう。

韓国人はもともと、音楽や盛り上がるダンスが大好きだ。韓国の民族舞踊にもあるように庶民の生活と深く関連していて、「カンガンスルレ」や「タルチュム」と呼ばれる民族舞踊は、観客も掛け声や歌などで一緒に参加するスタイルで、観客が演技者と一体化する。韓国のバラエティー番組を見ていると観客が出演者と踊りだしたり一体となって楽しむ場面をよく目にする。また、映画『サニー』『過速スキャンダル』のように音楽で盛り上がるシーンのある映画がヒットするのも国民性を見ればうなずける。そういった点で、『ボヘミアン・ラプソディ』は盛り上がるライブシーンが多く、韓国人がハマりやすいタイプの映画だったといえる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

サムスン、第1四半期のAI半導体低迷を警告 米の対

ワールド

ガザ検問所に米退役軍人配置へ、イスラエル・アラブ諸

ワールド

米レーガン空港、ヘリとのニアミス事案頻発 80年代

ビジネス

コマツ、今吉専務が社長就任へ 小川社長は会長に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中