【写真特集】熱感知カメラが捉えた難民と苦境
THE CASTLE
難民収容施設となった旧軍事基地。収容能力を大幅に超えた人数が、有刺鉄線の中で移動もできず悲惨な生活を送る(ギリシャ・レスボス島)
<難民の存在と人権侵害の実態が外部の文明社会から「視認できない」現状>
写真集『The Castle』に収められているのは、各国の難民キャンプ。多くは周辺の現代的な社会から受け入れを拒まれているかのように隔離され、人目に付かないよう隠されているような場所もある。
撮影したリチャード・モスがテーマとしたのは、難民に対する政府や社会の冷淡な姿勢と、その結果として彼らが送る生活の悲惨さだ。だが彼は個々の人物に焦点を当てるのではなく、あえて遠距離から全体のイメージを捉える手法を採用した。しかも使用したのは、軍事監視用の赤外線サーマル(熱感知)カメラだ。
多くのテントや仮設の建造物が複雑に立ち並ぶモノクロの世界に、人体が発する熱が亡霊のように浮かび上がる。その姿は、難民の存在と人権侵害の実態が外部の文明社会から「視認できない」状況を暗示している。
悲惨な生活ぶりや貧しい身なりの子供の写真のほうが、同情は呼べる。だが同情することは、彼らの悲惨な状況を見過ごしてきた先進国の人々にとって一種の免罪符にもなる。自分自身にも責任の一端があると認めつつ、モスは写真を見る人もまた、彼らを見捨てた共犯者なのだと訴えている。