最新記事

中国

習近平の狙いは月面軍事基地──世界で初めて月の裏側

2018年12月11日(火)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米中ハイテク戦争を宇宙でも始めている習近平政権の面々 Kevin Lamarque-REUTERS

12月8日、中国が月の裏側着陸のための月面探査機打ち上げに世界で初めて成功した。国家戦略「中国製造2025」の一環で、資源開発を名目に月面基地を創り、軍事的に拡張して、宇宙制覇の根拠地にすることが狙いだ。

中国が世界で初めて月の裏側に月面探査機を軟着陸

12月8日、北京時間午前2時23分(日本時間午前3時23分)、四川省にある西昌人工衛星発射センターから、運搬用ロケットである長征3号乙による嫦娥(じょうが)4号(月面探査機)を打ち上げた。月の裏側を探査するための探査機としては、世界初めてとなる。
 
打ち上げから26日後には月の裏側に軟着陸する予定だ。
 
地球からは月の片面だけしか見えていなくて、それを「表側」と称すれば、反対側の「裏側」には地球から直接信号を送ることができないため、中国は今年5月、通信を中継するための人工衛星「鵲(しゃく)橋号」を打ち上げている。
 
これらの計画は中国の国家戦略「中国製造2025」とともに出された「2016中国宇宙白書」に則って実行されたものであり、中国は着々と月面基地を作ることに向けて動いてきた。
 
月の裏側は、独特の電磁場環境にあり、低周波無線の実験などに適している。中国の政府系メディアは、人類未踏の宇宙の神秘を解明する事業に入ったと報道している。
 
中国の国家国防科技工業局と国家航天局(宇宙局)は、嫦娥4号の使命には、以下の二つがあると述べている。
  
.月・中継通信衛星を発射することによって、世界で最初の「地球と月」の「ラグランジュ点L2」における測定と中継通信を試みること。(筆者注:「ラグランジュ点L2」というのは二つの天体があった時の力の相互作用で、引力などにより一般に楕円に近い形を描く。二体問題として計算したときに「L2」と称する。実際には「地球と月」以外に他の天体があるので、多体問題として計算するしかないが、多体問題の解答は出せないので、二体問題として漸近的解答を求めるべく測定を試みるのだろう。今年5月に打ち上げられた中継通信衛星「鵲橋号」は、すでに地球と月のラグランジュ点の軌道を回っている。)
  
.月面軟着陸機や「ローバー」の実験をすること。(筆者注:「ローバー」というのは、月面を動き回る車のことで、軟着陸に成功したとしても、一か所にいたのでは観測範囲が限られ、特に今回は無人探査機なので、宇宙飛行士が月面を歩き回る段階ではない。そこで中国語では「巡視器」と呼ばれているローバーを用いて、中性子輻射量など、さまざまな観測をする。)
 
オランダ、ドイツ、スウェーデン、サウジアラビアなどが、探査実験に参加している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中